散歩と懐中電灯
私の実家にはたくさんの懐中電灯がある。家族全員散歩が大好きで夜になると皆で散歩に出かける。母は全員に懐中電灯を持たせる。田舎道なので車に轢かれないためではなく、用水路や川などに落ちないための懐中電灯だ。
懐中電灯を照らしながら散歩に出かける。春は田んぼに流れ込む用水の流れを感じ、夏はカエルの大合唱を聞き、秋は虫の声を楽しみ、冬は寒空に輝く満天の星を見上げる。もちろん夜空の星を見上げる時は全員が一斉に懐中電灯の明かりを消す。季節を通じて夜の散歩では父や兄の星座講座が始まる。長年星座の話を聞いてきたが、私が夜空を見上げ分かる星座は数少ない。
今住んでいる町で散歩しても満足感がない。空は明るく星は少ししか見えないし、空気も澄んでいない。
コロナウイルスで関東に住む姉も長らく帰省できていない。早くコロナウイルスが収まり家族揃って夜の散歩ができたら嬉しい。きっとその時は働き者の母が皆に懐中電灯を配ってくれるだろう。