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「いっきゃく」を思い出し感傷に浸る秋の夜

子どもの頃、家の庭にはいっきゃくがあった。今日「いっきゃく」という言葉を調べたら我が故郷神山町の方言だと分かった。

イッキャク :  夕涼みなどに使う木製の大きな腰掛け。縁台。

私はいっきゃくと共に生活していた。いっきゃくに寝転がって青空や流れる雲を飽きることなく眺め、夜になると兄や姉と一緒に星空を眺めた。夏の夜は庭でバーベキューをした。いっきゃくに料理を並べたり、腰掛けて食べたり、家族でワイワイガヤガヤ楽しかった。

近所のおじさんが山で捕まえたマムシを入れた一升瓶をいっきゃくに置いたこともある。一升瓶の中のマムシは中でニョロニョロと動き回っていた。そして一升瓶の中に日本酒をいれたらマムシ酒の出来上がりだ。

いつの間にか実家の庭から消えたいっきゃく。雨ざらしだったから腐って捨てたのかな。父と母の二人暮らしには必要なかったのかもしれない。

もう一度実家の庭でいっきゃくに寝転がって空を眺めたい。柿の葉っぱの隙間から見える青空や雲や満天の星を眺めたい。父、母、兄、姉と一緒にバーベキューしたい。亡くなった祖父母にも参加してもらいたい。祖父母に肉を焼いてお皿に乗せてあげたい。

秋の夜は感傷に浸ってしまう。


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