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奇術部時代のトラウマ

子どもの頃手品を見るのが大好きだった。兄のカードマジック、テレビの大掛かりなマジックショー、手品を使った映画。手品の楽しい思い出はいっぱいある。

大学に入り知り合った女の子が手品を見せてくれた。底抜けに明るい女の子だった。テーブルマジックを見せてもらって喜んだ私を彼女はある部室に連れて行った。奇術部だった。私は手品を見るのは好きだったが自分が手品をするのは苦手だった。しかし流れで何故か入部してしまった。それから手品の練習をする日々が始まった。夏には朝から晩まで手品の練習をする合宿もあった。手品の発表会前には厳しい特訓があった。手先が不器用な私には辛い練習だった。また人前に立つのが苦手な私には手品の発表会が一番地獄だった。

印象的な発表会がいくつかある。吉野川遊園地の舞台でやった人形の家という名の手品。底抜けに明るい女の子を小さな人形の家に入れて、私が刀を何本も刺す手品だ。小さな子ども達が「人殺し〜!」と怒鳴ったり、最後に人形の家から女の子が生きて出てきたら歓声が上がったり結構盛り上がった。私の奇術部の数少ない楽しい思い出だ。他には小豆島のミッション系の老人ホームを慰問したこともあった。結構重度の老人が多く、手品を見てもあまり反応がなかった。老人の世話をするシスター達が代わりに拍手してくれたり優しく盛り上げてくれた。

今は奇術部の地獄の練習で培った手品の技は全て私から消え去った。今は簡単なカードマジックすら出来ない素人以下のレベルだ。また奇術部のトラウマが原因で、手品を見ることすら好きではなくなった。

トラウマって本当に恐ろしい。

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