最高の散歩道
高校に入学した日、クラスで自己紹介をした。順番に名前と出身中学と趣味を言った。順番が来て私は「趣味は散歩です」と言った。笑い声が聞こえた。私は散歩が趣味なことは笑われることなんだと初めて知った。根っからの〝笑われてなんぼ〟な私は笑いが起きたことは嫌ではなかった。
田舎で育った私は毎日のように家族と散歩をした。川のせせらぎ、虫の声、カエルの合唱、満点の星の瞬き、山から降りてくる風、稲穂の揺れ、鳥の鳴き声…家族と歩く散歩道は自然の宝物で溢れていた。日々季節が移っていく様を感じることができた。
実家を出て一応徳島県では都会な徳島市で暮らすようになり散歩が趣味ではなくなった。整備された公園、アスファルトの道、整然と植えられた街路樹、濁った川、白っぽい夜空…ただブラブラと散歩しても楽しくなかった。
今も実家に帰ると散歩に出かける。家の近くの道は私にとって最高の散歩道だ。田舎の道だったら良い訳ではない。小さい頃から家族と一緒に歩いた思い出がいっぱいだから最高なんだろう。
コロナウィルスが収束し姉が帰省出来たら、父母、兄、姉と一緒に散歩したい。私の子ども達や甥姪も一緒だったらどんなにか賑やかで楽しいだろう。久しぶりに父や兄の星座講座も聞いてみたいし、用水路で葉っぱ流し競争もしてみたい。夏休みが待ち遠しい。