母の思い出
小学3年の頃寒い冬のある日絵本を読んでいた。既に年の離れた兄と姉は家におらず末っ子の私はひとりっ子状態。絵本の中の女の子が美味しそうなさつまいもを食べているのを見た私は「お母さんさつまいもが食べたい!」とねだった。母は「家にさつまいもはない」と答えた。私が育った村はスーパーがなくて今のように欲しいものがすぐ手に入る場所ではなかった。わがままな私は多分泣きながら母にさつまいもが食べたいさつまいもが食べたいと駄々をこねたのだろう。母は私の手を引いて雪の積もった道を歩き近所の農家をまわってくれた。何軒目かの家に少しだけさつまいもがあり売ってもらった。
家に帰り母がふかしてくれたさつまいもは水っぽく甘みが少なくてすごく不味かった記憶がある。
大人になってもさつまいもを求めて雪の積もったあぜ道を母と歩いたことを思い出す。そしていつも涙ぐむ。
こんな思い出の数々が私の心を強く守ってくれているんだろうなと思う。