コロナでブームになった中国のライブコマースの現状と未来
皆さんこんにちは。エンジョイジャパンの橋本です。過去の記事でもご紹介しましたが、中国の新たなマーケティング手法として、多くの企業は「ライブ中継」を実施するようになっています。「李佳琦(オースティン)」や「薇娅(ウェイヤ―)」等のトップKOLだけではなく、リアル店舗で働く販売員から素人まで全国民がライブ中継する時代になりました。「网红直播(セールスKOL)」はもはや新しい「職業」として国民に受け入れられています。
多くの企業や個人がライブコマース業界に参入した理由は、稼げるからです。中国には「跟风(真似すること)」という文化があり、ライブコマース業界で成功した企業やKOLを見て、同じことをすれば同じように成功するのではないかと真似する人たちがたくさん存在します。ただ、そうやって真似する人が増えた結果、ライブコマースの質が落ちて、商品が売れないという状態に現在は陥っています。
本日は、ライブコマースの現状と未来についてお話したいと思います。
(一)ライブコマースにおける現状
ライブコマースがブームになっている現在、多くの芸能人もライブ中継をスタートさせています。しかし、理想の売上に到達することは出来ていません。過去の記事でもご紹介した美魔女オーディション「乘风破浪的姐姐」の参加者たちが初のライブ中継を行った結果、370万(日本円約5,600万円)しか売り上げることが出来ませんでした。たった1回のライブ中継で5,600万円も売上があると聞いて、多いのではないかと感じる人もいるかもしれませんが、「ウェイヤー」のライブ中継はたった1回で10億円を売り上げていました。それと比較すると、今現在話題沸騰のオーディションに参している芸能人でもこのレベルで留まってしまっています。
ライブ中継で商品が売れなくなったことで、数多くのKOLは虚偽のデータを報告するようになりました。中国のメディアアライアンス会社「WeMedia」と「凤凰网娱乐(中国のニュースサイト)」のデータによると、TOP50にランクインしたライブ中継を行うKOLたちが発表した今年5月のGMVの合計が123億元(日本円1兆3,194億円)だったところ、実際の売上高は約1億3,000万元(日本円約19億円)で、不正率は98.9%に達していました。
ライブ中継で商品が売れなくなった理由は様々です。芸能人は元々人気があるため、ライブ中継の視聴者数は断トツに多いのですが、ライブ中継に関する知識や経験が少ないので、一歩間違えれば「ライブバラエティー」になってしまいます。視聴者数こそ多いものの、商品を購入する人が少ないという現象が起きています。また、返品する消費者もここ最近多くなってきています。とある中国企業がお笑い芸人の「小沈阳(ショウシェンヤン)」をライブ中継に起用し、中国を代表とするお酒「白酒(バイジュー)」を販売した結果、当日は20件のオーダーを獲得することが出来たのですが、翌日には16件も返品となっていました。小沈阳を起用するのに15,000元(日本円23万)もかかったのにも関わらず、痛い結果になりました。
現在、ライブコマースについては、消費者たちが理性を取り戻しつつある、ということが言えるでしょう。
(二)ライブコマースにおける未来
7月20日、「21世纪经济报道(経済ニュースサイト)」がセールスKOLの「胡潇云(フーショウユン)」を取材したところ、彼女の年間売上高は数億元に達していて、短期間で46万人ものファンが増えていました。ライブコマース黎明期と比べると、現在は業界全体が厳しくなってきていますが、全体的に見るとライブコマースはまだまだ衰退することはないと言っていいでしょう。ただし、理性を取り戻した消費者の購買意欲を喚起させるため、「商品の品質」、「価格設定」、「KOL選定」の3つのポイントをしっかり押さえておく必要があります。
まず商品の品質について。ライブ中継を見て衝動買いした消費者にとって、届いた商品の品質が悪かったら、もう2度とこのブランドを購入することはないでしょう。特に多くの企業がライブコマースに参入している現在、最終的に生き残るのは品質がしっかりとしている商品なのは間違いありません。
次に価格設定について。ライブ中継は言わば「価格競争の場」です。よくライブ中継でKOLが視聴者に対して「○○元まで値下げするようにブランド側と交渉したよ!早くこのチャンスを見逃すな!」と話しかけています。消費者たちは安くて良い物を買いたいという思いでライブ中継を見ているので、価格設定はとても大事になってきます。ただし、ライブ中継で値下げ販売して売上に繋がったとしても、商品価格を通常に戻した後売れないケースもあります。
最後にKOL選定について。消費者はKOLのファンであり、ブランドのファンではありません。トップセールスKOLの「李佳琦(オースティン)」や「薇娅(ウェイヤ―)」の販売実績は依然として高いです。それは、彼らのファンは「ライブ中継で買い物をする消費者」だからです。KOLの選定もライブ中継で成功をするのに非常に重要なポイントになります。
まとめると、これからのライブコマースは、商品の品質を高め、適切な価格設定を行い、販売力があるKOLを起用する、という3点が重要なポイントになるでしょう。
以上、中国のライブコマースの現状と未来についてご紹介しました。最近ご紹介したオーディション番組と同じように、中国ではビジネスチャンスを感じるとすぐに真似するという文化があります。そのため、ライブコマース業界の質が落ちていますが、まだまだライブコマースで成功する方法は残されています。
気になることがありましたら、ぜひ橋本までご連絡ください。
メール:hashimoto@enjoy-japan.jp
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