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コミュニケーションも、まずは「真似」からでいい

アナウンサー時代、カメラに向かって
話し続けることに
いつまでたっても慣れなかった。
自信がないから、おどおどしていると怒られるし
振り切って過剰にふるまうと「もっと自然体で」とディレクターから言われる。

心の中で、いつも、つぶやいていた。
「自然体ってなんだよ。
カメラの前でひとりで話すなんて
不自然極まりないじゃないか」

今のように「動画」がありふれている時代でもなく
私は「自然に見える『不自然体』」を体得すべく
様々なテレビ番組を研究した。
もっとも、参考になったのは
「世界ふしぎ発見!」の
ミステリーハンターさんたちのふるまいだ。
例えば、エジプト・ピラミッドの横を歩きながら
その歴史的価値についてひとり
説明していたかと思ったら
急に立ち止まって「ここでクエスチョンです」
と、やる。
こんなに「不自然なふるまい」が
なんと「自然」に見えること!
一人暮らしのアパートで
ハンターさんになりきって
同じように歩いて喋って、止まって
アクションしてみる。
「ここでクエスチョンです」
そうやって、カメラの前でのふるまいを
ひとつひとつ「真似」しながら身に着けた。

「学ぶ」という言葉の起源は
「真似ぶ」だと聞いたことがある。
思い返せば、アナウンサーとしての
コミュニケーションやふるまいは
ほとんどすべて「真似」から身に着けた。
リポートのふるまいは「ミステリーハンター」を
真似したし
原稿の書き方は、先輩アナの準備の様子を
観察して真似しながら身に着けていった。

私より9つ年上の先輩が
とにかく準備に力を注ぐ方だった。
わずか3分のリポートのために
図書館で借りてきた本が
いつだって何冊もデスクに置いてある。
ここまでやらないといけないんだ…
私もひとまず、図書館で本を借りてみた(笑)

真似したところで、もちろん
先輩のようにしっかり
リポート出来るわけでもなかったけれど
真似しては失敗し、また真似しては失敗してを
繰り返しながら、少しずつ
出来ることを増やしていった。

今日の沼津労政会館での講演会の質疑応答で
「本物のことばを持てるようになるには
どうしたら?」という質問をいただいた。
咄嗟に私から出たのは
「本物のことばを持っている
 リスペクト出来る方のそばにいること」
「そういう方に学ぶこと」という答えだった。

リスペクトしている方(師匠たち)と
学び場などでご一緒すると
出来てない自分が、本当に恥ずかしくなる。
そして、そこを超えると
少しでも追いつきたくなって
真似するようになる。
そうこうしているうちに
不思議と、心もついていくのだ。

今日の講演会でも紹介した
私の大事にしている「ことば」のひとつに
「手のひらを自分に」ということばがある。
コミュニケーションのすれ違いなどで
相手を非難したくなったり、否定したくなった時に
「じゃあ、自分はどうなの?」と
相手から自分に意識を戻すためのことばだ。

この「ことば」がとりわけお気に入りなのは
ふるまいもセットということ。
心が荒れたら、私は胸に手のひらを当てて
「手のひらを自分に」とつぶやく。
すると、不思議なことに
少しずつ「責め心」が薄らいでいって
心も落ち着いてくる。

最初は「真似」だったけれど
すっかり、自分にインストールされ
とっても役に立っている。ありがたいことだ。

ずーっと「真似」でいいのか?と
思うかもしれない。
でも、大丈夫!
超一流のふるまいを「真似」したところで
凡人には、限界がある。
つまり「真似」から始めても
100人100通り、みんな違うから
「そのまんま、そっくり同じ」にはならなくて
どこか、その人らしさが残ってしまって
結果的には「真似」も
「オリジナル」になっていく。

さあ、今日はどんな「真似」から学ぼうか?

「真似」って、深いなぁ









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