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「産休・育休中のリスキリングを後押し」育児休業中のリスキリングを考える

岸田文雄首相が2023年1月27日の参院本会議で、賃金上昇やキャリアアップに向け、産休・育休中のリスキリング(学び直し)を「後押しする」と答弁し、このことがSNSやマスメディアの間で物議を醸しました。

育児休業中にリスキリングに取り組むことについて考えてみたいと思います。 


子育てと勉強の両立・・・。


子育ての大変さや育児休業中の時間の使い方については、両親の支援(祖父母と同居しているか、祖父母が近隣にいるか)、夫婦間における家事育児のバランスや協力体制、初めての出産か2回目以降か、そして世帯収入など、子を育てる親が身を置く環境によって大きく変わりますが、個人的な経験から、「育児休業中にリスキリングは可能か」と問われれば、「可能ではある」とは思います。
 
なぜならが、子どもを保育園に預けてフルタイムで働いている場合より、育児休業中の方が、他者(会社)に拘束されない時間が多いからです。そして子どもは昼寝をしますし、1日の睡眠時間は大人より5時間くらいは多いです。そこで、家事にかける時間の調整が出来れば、子どもが寝ている間に、リスキリングのための一定の時間を確保することは“物理的には”可能と思います。(ただし、子どもがまとまった睡眠を取り、昼夜を区別して一定のリズムで生活ができるまでの期間は別物です。それまでは親も昼夜関係ありません。)
 
また、育児雑誌などには、『育休中の一日の過ごし方♪』のようなタイトルで、「子どもの昼寝中に資格試験の勉強をして仕事復帰に備える!」などの記事が組まれたりもしているほどで、リスキリングが話題になる以前から実際に育児休業中に何らかの学習をしていたという人も一定数いると思われます。
 

赤ちゃんが寝ている間に勉強をしてみる・・・。


 
しかし、育児休業中に空いた時間を本格的なリスキリングに費やすことは多くの人にとっては精神的、体力的に難しく、決して“普通”のことではないと思います。

乳幼児の子どもの世話をしている親としては、このような時間に休息に努めるのはもちろん、メンタルバランスを保つために娯楽や息抜きの時間も必要です。
離乳食の研究をしたり、おもちゃや絵本を選んだり、部屋の環境を整えたりと、子どものために何かをする時間に使いたいところでもあります。
さらに、時間が確保できるといっても、切れ目があることが多く、子どもの状況によって変動することが多々あるので長時間の集中力を必要とする学習にはあまり向いていません。

因みに私自身もちょっとした研鑽をしようとチャレンジしました。これについては私自身の継続性や根気の無さもありますが、“いくつか本を読む”程度で終わりました。
 

子どもと向き合うのには何ともエネルギーがいるのです・・・。



今回の首相の国会答弁主旨としては「子育てをしている人であっても、キャリアアップを通じて、収入増や自己実現を成し遂げられるために国が支援する」という意図であったかもしれません。はたまた、「リスキリングと子育てを楽々両立ができるくらい余裕のある子育て環境を整える」という革新的な理念があるかもしれません。それらはそれらで歓迎すべき方向性かもしれませんが、「首相は現代の子育ての苦労が理解できていないのでは」という印象を与えることとなったように思えます。


どのように国民に伝えるか、どのように国民に伝わるか・・・難しいですね。


 
あらゆる人がキャリアアップ、つまり就労することにおいて自己実現や幸福を得られるとは限りませんが、夫婦共働きが多くの国民にとって半ば唯一の選択肢となっている現代社会において、実はリスキリングと子育てを掛け合わせたこの発想は、もし効果的に実現できれば、少子化対策、賃上げ、生産性向上、国民の幸福度の向上など、日本の諸課題がまとめて解決できるかもしれません。しかし、元々の育児休業の在り方を覆すものですし、現代日本においてはとても高度な施策展開の構想な気がします。


国の支援も重要ですが、自分たちで考えて幸せを築いていかなければならないのかもしれません。


 
世間一般には理解が難しく受け入れ難い発言となりましたが、もしかしたらこのような対策が、『これまでとは次元が異なる少子化対策』なのかもしれません。

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