『ダンキラ!!!』日向まひるが紅アゲハと同室になって生じた意味。猫と蝶のイメージから考察
3月20日は少年ダンサー育成ゲーム『ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -』に登場する日向まひるの誕生日。
公式サイトの肩書は「愛すよりも愛されたい野良猫ダンサー」で、児童養護施設ひつじ館出身者で結成したチーム・メリーパニックのメンバーだ。
肩書からもわかるように、まひるのイメージといえば猫。
制服の下に着用しているカーディガンにはワンポイントで猫の刺繍が入っており、私服のTシャツにも猫のグラフィックがデザインされている。
そんなまひるが暮らす特待生専用寮は2人部屋。
ルームメイトの紅アゲハはまひるが憧れている存在で、蝶のモチーフを好んでいる。
なぜ猫をモチーフとしたまひると、蝶を連想させるアゲハは同室になったのだろうか。
さまざまな理由が考えられるが、今回は猫と蝶に秘められた意味を手掛かりに探ってみよう。
※このnoteは個人が趣味で書いたものであり、公式等とは一切関係ない。
猫と蝶は吉兆のしるし
猫と蝶のモチーフは、絵画の世界にも度々登場している。
浮世絵の絵師・鈴木春信が描いた『猫に蝶』には、赤い首輪をした猫が空を舞う蝶を見上げる様子が描かれている。
鈴木華邨(すずきかそん)の『少女と猫』では子猫とともに着物姿の少女が描かれ、羽織の中では蝶が舞っている。
さらに原在明(はらざいめい)の『虎耳草(ユキノシタ)と猫』では、リアルなタッチで描かれた猫の目線の先に蝶の姿が見られる。
猫と蝶の組み合わせを描いているのは絵画だけに限らない。
焼き物の世界でも、「染付猫牡丹文輪花大皿」のように猫と蝶、場合によってはさらに牡丹をセットにしたモチーフが好まれた。
なぜ猫と蝶はともに描かれたか。それはこのモチーフが吉兆の象徴だったからだ。
猫は中国語で「マオ」と読み、同じ読み方の「耄(おいぼれ、の意)」を連想させる。
蝶は「ティエ」と発音し、同じ音を持つ漢字には「耋(としより、の意)」があった。
この2文字を組み合わせた言葉が「耄耋(ぼうてつ、もうてつ)」。長寿を願う文様を指した。
この「耄耋」に牡丹などの花を描き加えると、「富貴」の意味も生まれる。吉兆のシンボルでもある猫と蝶は、中国や日本などで古くから親しまれてきた。
ところで生物の性質上、猫は地上に、蝶は空中にいる構図で描かれることが多い。
猫はまるで宙を自由に舞う蝶にあこがれを抱くかのように、空を見上げる。
その姿は、アゲハを目標として毎日自分磨きをするまひるのようだ。
自らの足で運命を切り開いた猫
ここで、猫単体ではどのような歴史を歩んできたのか、おさらいしておこう。
猫はエジプトに起源をもつ動物だと考えられており、その発祥は4,000年から5,000年前にさかのぼる。
エジプトには猫の姿を持つ神もおり、壁画や彫像などでも表現された。
猫はだんだんと中東やヨーロッパなどに流入し、地域によって異なる受け取り方をされてきた。
とくにヨーロッパでは魔女の遣いとして目を付けられて迫害されるなど厳しい時代も過ごしている。
そもそも猫がヨーロッパにやってきた理由のひとつは、ネズミの駆除だった。
倉庫などに出没しては人間を悩ませていたネズミ。
それを捕食できる猫は、人々の生活を支えてきた。
猫の数が減れば、今度はネズミが増える。
ネズミは14世紀に猛威を振るったペストの流行源とも考えられており、その駆除は当時の人々にとってどうしても必要だったのだ。
猫の重要性に気づいてからも、地位回復までにはしばらく時間がかかった。
契機となったのは、17世紀に発行されたシャルル・ペローの童話『長靴をはいた猫』だと考える説もある。
『長靴をはいた猫』は、粉ひきの家系に生まれた末息子の出世物語。
遺産として分け与えられた猫に「私に長靴をください」と要求され、その通りにしたところ猫の機転で姫と結婚するほどの成功を収めた。
この長靴は革製のブーツを指しており、当時は貴族を象徴するアイテムだった。
たとえ猫でもきれいに着飾れば周囲に影響を与えるほどの力を得ることができる。
当初は飼い主に食われそうになるほど弱者だった猫は対等の立場を得て、恩人として重宝されるようになった。
猫は長年人間とパートナー関係を築いてきたが、前述したように苦しい立場も経験している。
そんな状況下でも自分の価値を知らしめ、必要な存在として周囲を認めさせた。
まひるも同様に、誰かに必要とされる存在になろうと努力を積み重ねている。
自らの足で立ち、運命を切り開いていく点において、まひると猫はよく似ているといえるのではないだろうか。
猫とかわいいの関係
まひるに欠かせないもうひとつの要素にかわいさが挙げられる。
まひるを見た人が「かわいい」と思うように、猫を見た人も「かわいい」と言いたくなる。
なぜ猫もまひるも、これほどかわいいのだろうか。
猫のかわいさを研究した資料はいくつかあるが、ここでは「ベビースキーマ」に着目したい。
ベビースキーマとは、相手に「かわいい!」と思わせることのできる顔の形だ。
大きな頭や瞳、丸みのあるシルエット、小さな鼻などいくつか特徴がある。
これは猫に限らず、人間の赤ちゃんも持つ特徴だ。
ベビースキーマに直面したとき、多くの動物は「この子を守ってあげたい」と養護反応を示す。
まだ自力で生きる力のない赤ちゃんにとって、ベビースキーマは大きな武器といえよう。
しかし野良猫の世界は厳しく、たとえベビースキーマを持っていても親に置き去りにされるケースが少なくない。
残された子どもは厳しい世界を生き抜くしかないが、大きくなれるのはほんのひと握り。
それでもベビースキーマに反応したほかの動物に運よく保護されれば、生存の可能性が上がる。
かわいさは単に人間の心を癒すためではなく、誰かに必要とされるために不可欠な力なのだ。
まひるがひつじ館に来るまでの経緯を考えると、彼がかわいさにこだわる理由が伝わってくる。
かわいくなければ、またひとりきりになってしまうかもしれない。
そんな不安と常に戦い続け、それでも蝶のようになりたいと顔を上げ続けてきたのだろう。
蝶に出会った猫はいつしか吉兆の象徴となり、まひるに幸せをもたらしてくれるはずだ。
参考
https://www.umakato.jp/column_ceramic/b_vol38.html
https://www.cinra.net/news/20170326-ukiyoezoo
https://www.syukado.jp/sodatta/vol371/
http://kampokan.com/event/2020/09/%e9%96%8b%e9%a4%a825%e5%91%a8%e5%b9%b4%e7%a7%8b%e5%ad%a3%e4%bc%81%e7%94%bb%e5%b1%95%e3%80%8c%e8%80%84%e8%80%8b%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%83%8b%e3%83%a3%e3%83%b3%e3%81%a0%ef%bc%81%ef%bc%9f%ef%bc%8d%e5%90%89/
https://www.irisplaza.co.jp/media/A13921009350
https://www.kodomo.go.jp/gallery/edoehon/puss/index.html
https://kansaigaidai.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=7814&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1&page_id=13&block_id=21
https://cat.benesse.ne.jp/withcat/content/?id=22221
https://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2018/proceedings/pdf/JCSS2018_sP1-59.pdf
https://psych.or.jp/interest/ff-22/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?