信念が結実した場所 つどいの里 八ヶ岳山野草園
私が八ヶ岳での二拠点生活に踏み切った理由は、自分自身のこれからの生き方を変えたかったからでした。八ヶ岳に暮らした先輩たちの著書を読み、森や自然を愛する生き方に不思議と共鳴するところを感じたからです。
そんな私がかねてから行きたかった場所を、ついに訪れることができました。「つどいの里 八ヶ岳山野草園」です。ここを開拓した方の大きな夢と、その夢を現実にするまでの途方もない労力をビシバシと感じられる、ものすごい場所でした。4.6ヘクタールの山地を切り開いて数十万の山野草を植え、完成した山野草園を無料で開放しているのです。
つどいの里の概要
八ヶ岳の西麓、長野県茅野市にあります。白樺湖を目指す大門街道沿いです。入口に山野草園全体の地図があったので、まずはこの写真を貼りましょう。
あまり準備していなかったのですが、これはもはや登山ですね。
水筒くらいは持っていましたが、天気が微妙な時は雨具とかも持っていったほうが良かったと思いました。植物アプリで山野草を調べながらゆっくり歩きましたが、1周するのに1時間ほどかかりました。
この地図では分かりにくいですが、山野草園は全体的に斜面になっています。遊歩道が蛇行しているのは、急斜面をなだらかに登るためですね。
Googleマップで立体的に表示させてみた画像も貼っておきます。
基本的には歩きやすい登り道が続いています。とは言っても、ある程度傾斜はあるので慣れない人は息が上がるかもしれませんね。
部分的に階段になっている場所もあります。建築資材でしょうか。同じサイズの木の板を組み合わせた形で、アイデアと工夫が凝らされた手作りの階段という雰囲気です。
この場所はかつて、ススキや樹木に覆われて人が踏み込みにくい山だったそうです。この山野草園の代表の方が土地を購入し、2006年に山野草園として開業しました。本業の土木会社の仕事をしながらも1日1回は訪れて、散策路を巡りながら手を入れてこられたのです。
急斜面を歩きやすくする散策路の構造、山野草の種類と数の多さ、そしてそれらが一体となった風景としての美しさ。
いったい、どれだけの労力をかけて整備してこられたのでしょうか。ただただ、そのスケールに圧倒されました。
咲き誇る山野草
山野草の数や種類は、とても数えきれません。
公式ホームページによると、60万株の山野草が生えているとのこと。
普通に山や渓流を歩くのでは、こんなに多種類の山野草を見つけることはできないでしょう。山野草の美しさに心惹かれ、その種類や名前について勉強中の私にとってはこれ以上ない学習場所であり、美術館であり、博物館なのです。
たくさんの植物をアプリにかざして名前を調べ、たくさんの植物の写真を撮りました。少しだけご紹介しましょう。
山野草にご興味がある方は、最初に写真を紹介するので、なんという名前なのか考えてみてください。
すごく分かりやすい形をしていますね。
名前も分かりやすいので、とても覚えやすい山野草です。
この植物の名前は、「二人静」(フタリシズカ)です。
先日、「一人静」について記事を書いたところでした。
花穂が1本のものが一人静、2本のものが二人静なのです。
一人静(ヒトリシズカ)を見つけた千ヶ滝|ハセQ - 八ヶ岳を歩き回る読書家 (note.com)
とはいえ、二人静の花穂は2本より多いことも普通です。
この山野草園にも、3本、4本、5本とたくさん花穂をつけたものが多数咲いていました。というか、この登山的な散歩の道すがら、いたるところに咲き誇っていました。
では、次の写真へ。
いったい何輪の花が咲いているんでしょうね。
私は9輪だと思っていました。この花の名前が、クリンソウ(九輪草)ですからね。
でも、ざっと数えても10本以上が咲いているように思います。
調べてみると、花が9輪咲くという意味ではなく、お寺の建物の最上部にある「九輪」に似ているというのが名前の由来なのですね。
(あんまり似ていないと感じるけど)
一方で、ニリンソウ(二輪草)という花もありますが、こちらは花が2輪咲くことが名前の由来です。三分一湧水を散歩していたときに、見ることができました。葉っぱの形が毒草トリカブトと酷似していることでも、有名な植物です。
さらにややこしい話をしますが、イチリンソウやサンリンソウという植物もあります。そして、ニリンソウであっても花が1輪とか3輪ということもあるようで・・・。
二人静と同じような話になってきました。名前に数字がついていても、その数字だけで判断することは難しいということですね。
オクガフカイ。
では、次。
高原の花として有名ですね。
栃木県日光市の霧降高原、長野県の霧ケ峰、尾瀬、富士山麓など、6月から7月にかけてこの花を見に行く人であふれます。そう、ニッコウキスゲです。
でも、私の植物アプリで判定すると、マンシュウキスゲと出ます。
ニッコウキスゲとマンシュウキスゲ、両方ともWebで検索できるのですが、どちらも同じ形に見えます。そして、その違いについて解説してくれているWebサイトを発見できませんでした。
Chat GPTに聞いてみると、こんな感じでした。
うーん、本当なのだろうか。
他にも、手を変え品を変えいろいろと調べてみたのですが、両者の違いについて決定的な情報を見つけることができませんでした。本当は同じ種類なのかと感じながら、そういう根拠も見つけることができませんでした。
こういう時、どうやって調べればいいんでしょうね。図鑑とかでも、この2種類の違いを説明するというニッチなニーズに応えてくれるものはあるのだろうか。
次で最後にしましょう。
すごく目立つ花ですよね。
この花は、おそらくヤマブキショウマです。植物アプリも、そう言っています。
すごく似た種類に、トリアシショウマというものがあります。白い花の形はほぼ同じで、見分けがつきません。
葉で見分けるのがいいようです。なお、上の写真では別の植物の葉が写りこんでしまっているのでご注意ください。
実際は、こんな葉の形になっています。
そして、両者の葉の形には、以下の違いがあります。
ヤマブキショウマ:二回三出複葉
トリアシショウマ:三回三出複葉
写真と図を見比べてください。この葉は、二回三出複葉ですね。
ですので、おそらくヤマブキショウマで合っていると思います。
noteを書いているのは、自分自身も勉強するためです。
これまで複葉の種類を意識したことがなかったのですが、こういう見分け方を知っていると今後の植物の着眼点が変わってきますよね。
ショウマと名前がつく植物は、見た目は似ているものの、実は色々な種類(科)のものが混在しています。
・サラシナショウマ(キンポウゲ科)
・ヤマブキショウマ(バラ科)
・トリアシショウマ(ユキノシタ科)
これだけ花などの形が似ているのに、違う科に属しているというのは不思議ですね。最近覚えた言葉ですが、これも収斂進化(しゅうれんしんか)なんでしょうね。違う種類の生物であっても同じ環境に生息した結果、外見に共通点が生じるのです。
ところで改めて公式サイトを見ると、植物の名前が書かれた園内マップを見つけました。なんと!
これを見ながら散策すれば、もっと正確に植物の名前が分かりましたね。
この地図には、ニッコウキスゲとありました。
とりあえず、私が迷っていた花についてもニッコウキスゲと言っておけば間違いないと思います。
寄せ植えも素晴らしい
山野草園のふもとでは、山野草や器などを販売しています。
そこに、軽石と苔をあしらえた山野草の寄せ植えも並んでいるのですが、これがまた素晴らしい作品ばかりです。
私は、八重咲コガクウツギを中心とする大き目の寄せ植えを4,000円で購入しました。
水を切らしてしまうと枯れてしまうので、自宅でもしっかりとお世話をしていこうと思います。花がもっとたくさん咲いてくれますように。
山野草が好きな方には絶対に響く場所です。
そして、この山野草園を作り上げてきた方の信念と実行力に驚かされます。想像を超えるものが目の前にあるというだけで、人の思いが伝わってくるんですね。
自分自身のこれからの生き方を変えたいという思いで八ヶ岳での二拠点生活を始めた私にとって、また大きな刺激を受けることができた場所でした。