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小説:ステルス・ミッション

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いじめ(コソコソ)撲滅小説。青森県ローカルネタ&津軽弁初級講座付き。
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記事一覧

【小説】ステルス・ミッション 16

 録音アプリを開き、ゴミ箱マークを表示させて京子に見せ、そこに触れ、削除する。

 証拠となる音声は、あっけなく消えてしまった。
「さっき言ったことは、オレからの、ただのお願い」
 閉じたままの家庭科室の扉の横を、数人の生徒が通り過ぎていく。
 完全に過ぎ去るまで、会話はまた、途切れた。

 京子は壁から離れて、修也君に近づいた。
「桃川さあ、ちょっと前髪、長いんじゃない?」
 京子も修也君のこと

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【小説】ステルス・ミッション 15

11

「なんでピーチが先生みたいなことすんの? 意味わかんない」

 全員連れ立ってでトイレから移動し、家庭科室に入るなり、美佐子がぐだめいだ。
 今朝、登校前に近所のコンビニで修也君と落ち合い、携帯電話を受け取った。それを私が内ポケットに入れて、休み時間は常に録音モードにしておいた方がいいと提案したのは修也君だった。いつ京子たちに絡まれるか分からないからだ。そして、おそらく後ろに時間制限のない

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【小説】ステルス・ミッション 14

10

 翌日はまた、午後からひどい吹雪になった。

 放課後になる頃には強い風は収まったけれど、例によって陸上部は休みとなってしまい、今日こそはという思いで、私は顧問の先生に校内練習の許可をもらうべく、一人、職員室に向かう。その途中、突然肩をグッと組まれた。

「ちょっと付き合ってよ」
 鹿内鈴香だった。筒井グループのナンバー2。
「部活ないんでしょ」鈴香はまっすぐ前を見てそう言い切る。組まれ

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【小説】ステルス・ミッション 13

09

 いつの間にかロケットの中には、熱気がこもっていた。

 首に巻いているマフラーを外そうかどうか、迷う。
「話してくれて、ありがとう」私は言った。「なんか、すごいね」
 口にできる言葉は、それくらいしかなかった。でも、話してくれたことがすごくうれしかった。ただ、それでも私にはまだ、疑問が残っていた。
「でも、今の話って、正義の味方活動と、関係あるの? 最終的に、桃川の罪悪感は解消されたんで

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【小説】ステルス・ミッション 12

 それから有介は1週間くらい学校を休んで、なんとそのまま転校してしまったんだ。会って面と向かって謝ることもできないまま、オレは有介と離れ離れになってしまった。

 多分、この事件があって、近隣の小学校でも失神ゲームが問題視されて、与田んとこでも全校集会で校長先生が警告するハメになったんじゃないかな。けどこの手の話って、逆に生徒たちが興味を持っちゃって流行ったりもするから、話すかどうかでまずモメるら

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【小説】ステルス・ミッション 11

08

「失神ゲーム」って聞いたことある? 
 ああ、校長先生が全校集会で。じゃあ与田の小学校でもきっと話題になったんだね。やったりやられたりしたことは? ない。そうか、ならよかった。世の中には体験しなくていいことってたくさんあるけど、盲腸とこれだけは間違いないと思う。

 小学校5年生の頃、オレは野球部だったんだけど、冬は雪でグラウンドを使えないから、歩いて10分くらいの公民館に付設されたジム

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【小説】ステルス・ミッション 10

07

「まだちゃんとお礼を言えてなかったと思う」
 狭いロケットの中で、私は迷いを振り払って言った。
「桃川が着てきた3色ジャージ。あれでだいぶ救われたとこ、あるんだ。ありがとう」
「あー、あれね。うん、元々は与田のものだしな。返そっか? 着る?」
 予想通り、修也君は話をはぐらかそうとしてきた。しかし、そんなにあっさり返してもいいのなら、奇抜なアート作品という意味でも、私の所有物というフェチ的

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【小説】ステルス・ミッション 09

 誰もいないゴール下で修也君が放ったボールがネットにもボードにも引っかからず、思いっきりあさっての方向へ飛んでいった時、チームメイトに振り返って「ごめーん!」と両手を合わせて謝る、その彼の背中に、白い糸の刺繍で、英語で「bitch!」と描かれていたのを。それは「クソ女!」の英訳だった。そのジャージには、まだうっすらと黒い油性ペンの跡も残っていた。

(私の、ジャージ――)
 あの時、私が教室の隅の

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【小説】ステルス・ミッション 08

 私は絶対に屈したくなかった。その一心で燃えていた。根がからきじなのだ。親や先生に「チクる」のは、屈する行為に属してしまうから、選択肢になるわけがなかった。松橋先輩のことは私の方こそ完全に無視していた。私の中では、まるで存在していない人物となった。私は彼を綺麗サッパリと殺した。想像の中で。想像の中ではあったが、私の中ではリアルな出来事だった。怒りと悔しさと理不尽さに対するパニックをすべて、想像上の

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【小説】ステルス・ミッション 07

06

 去年の秋。私たちは1年生だった。

 新人戦の地区大会で、私は100メートル、200メートル共に優勝した。特に100メートル走ではギリギリ12秒台が出て、この地区の記録としては久しぶりに大幅に更新されたらしく、新聞の地域版にも写真入りで大きく取り上げられたりした。その時、役に立つ助言をくれたのは確かに新しく男子キャプテンになったばかりの2年生の松橋先輩だった。学校の仕事でロクに指導に来な

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【小説】ステルス・ミッション 06

05

 20分後、私たちは再びロケットの中にいた。

 雪こそ降らないものの、今日もどんよりした日だった。体育があった日で、お互いにジャージだったけれど、修也君はまた梯子を使って上に昇ろうとした。私はそれを「いいよここで」とジャージの背中の掴んで引き留めた。
「私たち、つき合ってるんでしょ」
 まだ涙が混じった鼻声になっている。あざといかもしれないけど、ちょっと今は上じゃなくて、そばにいてほしか

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【小説】ステルス・ミッション 05

04

 翌日、私と修也君はいつも通り、朝の挨拶をかわすこともなくお互い自分の席に着き、しかしそれとなく筒井グループの様子を窺っていた。

 京子以外の3人は明らかに動揺していて、見るからに緊迫した面持ちだった。始業前に3人が京子の机の周りにすぐ集まってきて、それをリーダーの京子がうろたえるなと言わんばかりに制し、小声で話せと指示を出す。美佐子がスマホを取り出し、改めて内部告発文を3人に見せている

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【小説】ステルス・ミッション 04

03

【疑心暗鬼ループ! 恐怖の仲間割れ大作戦】

 それが修也君の考えた、いじめ撲滅計画の名前だった。なんだかB級映画臭がプンプンするけれど、大事なのは中身だ。中身は良かった。充分イケそうだった。
 パートナー契約を交わしたその日の内に、私は修也君とチャットアプリ「LINE」のアカウントも交換し、それから2日間かけて情報を共有し、作戦を練った。
 修也君は頭がいい。いろんなことを知っている。だ

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