『きく』創作日誌 Day 5:インスピレーションを受けた作品の紹介
どうも。長谷川優貴(@hase0616)です。クレオパトラというお笑いコンビでネタをしたり、エンニュイという劇団を主宰して脚本演出をしたりしています。
『きく』について
「きく」は元々、2019年5月に三鷹SCOOLで公演した演目です。去年は、それを再構築し、かながわ短編演劇アワードに参加。しかし、陽性者が出てしまい出場できず。
で、今年リベンジしようと思っていたのですが、まさかの応募締め切りのど忘れで応募さえできずに終わりました(笑)なにしてんねん!
でも、僕はきりかえがはやいので、だったら出場するはずだった期間のあたりで普通に会場を借りて公演してしまおうということに至ったわけです。
この作品は大切な作品です。そして今回、最高のメンバーがそろってくれました。台本も叩き直しています。初演とも、去年のコンクール用のやつとも違う新しい「きく」が出来上がります。
今エンニュイは良い流れの中にいると思います。この公演に全力をかけて挑みます。たくさんの方に観ていただきたいです。
どのように作っていくのか、「きく」とはなんなのかなど、公演まで毎日のように創作日誌的なものを書こうと思います。
創作にあたり参考にした作品
「きく」という当たり前で普遍的なテーマで作るにあたり凄く悩みました。聴いているような感覚になれる演劇。それをどう表現したらいいのか?
そこで今日は、いくつかのインスピレーションを受けた作品をご紹介いたします。
『トリストラム・シャンディ』
まずは、『トリストラム・シャンディ』という小説です。この小説は、同時に起こる出来事を複雑な形で綴り、膨大な情報をぎっしり詰め込んだ文体が特徴です。
この小説は、新奇な文体と、先駆的な手法によって知られています。主人公のトリストラム・シャンディが自身の生涯を回想するという筋書きはあるものの、筆者は読者に対して何度も語りかけたり、物語の進行を中断したりするため、単純な物語の進行を期待する読者を困惑させることがあります。
また、物語の中で、トリストラム・シャンディはしばしば自己言及的な表現を用い、読者に対して自己分析や著者に対する批判を行うことがあります。
『トリストラム・シャンディ』は、当時の社会の風刺や風俗描写、思索的な描写などが織り交ぜられた、多層的な小説です。
『きく』は、この小説にかなり影響を受けていると思います。
『エゴイスト』
次に、ジョージ・メレディスの小説『エゴイスト』です。
『エゴイスト』は、イギリスの小説家ジョージ・メレディスによる長編小説です。メレディスが自身の離婚体験をもとに執筆した、自己中心的で孤独な男性主人公の姿を描いた作品として知られています。
物語は、主人公のシルバー氏が、自分自身と他人とのバランスを取ることができず、愛と憎しみの感情にとらわれながら生きる様子を描き出しています。彼は自分の欲望や利益のために、周囲の人々を利用し、傷つけてしまいます。そして、彼が愛する女性との関係も破局に向かい、結局孤独な道を歩むことになります。
『エゴイスト』は、当時の社会の価値観に反した、自己中心的な主人公像を描いたことで批判を浴びた一方で、文学史において重要な作品として評価されています。特に、メレディスが独特の文体を用いて描き出した、主人公の内面の複雑な感情や思考が、後世の作家たちに大きな影響を与えたとされています。
ブルース・ビックフォードのアニメーション作品
そして、ブルース・ビックフォードのアニメーション作品。
彼は、クレイアニメーションの分野で大きな功績を残していますが、当時のメンバーに勧められた線画作品が『きく』の作品内の動きに多大な影響を与えてくれました。抽象的なイメージや、形の変化、空間の歪曲などが取り入れられ、美的感覚や感覚的な刺激を与えます。画面上の至る所で時々刻々と、あらゆる事象が生成変化して、様々なモチーフがメタモルフォーゼして、なんだかすんごい事が起こり続けていくのだけれど、一つ一つを追いかけていては、とても認知の速度が間に合わず、結果として、世界を知覚する事の不可能性への言及にもなっていると解釈もできます。
これは本当に、めちゃくちゃ参考にしました。この感覚は、初演の時よりも、今の方が体現できていると思います。
立川談志のオールナイトニッポン
最後に、立川談志のオールナイトニッポンです。
https://sp.nicovideo.jp/watch/sm11928319
これも勧められて聴きました。話が急に脱線したりと正にイリュージョンといった感じで、こちらも参考にしました。
(下ネタが多いのと言葉が強いので、苦手な方は聴かない方がいいかもです……)
最後に
以上、いくつかの作品から得たインスピレーションを紹介してきました。
これらの作品を参考に、どう舞台上に落とし込んでいるのか、気になったら是非とも観にきてください。
今日から稽古が本格的にスタートしました。
zzzpeakerとオツハタさん不在でしたが、本読みをしてから、新しいアイデアを試しました。良いシーンができそうです。
読んでいただきありがとうございました。
明日も、また『きく』についての創作日誌を書いていきます。
興味を少しでも持ったら、観に来てください。
きっと刺激的な体験が待っています。
ラジオ始めました。毎日22時にアップしてます。
エンニュイperformance
『きく』公演詳細
2023年3月24日ー26日
三鷹SCOOL
〒181-0013
東京都三鷹市下連雀 3-33-6
三京ユニオンビル 5F
三鷹駅南口・中央通り直進3分、右手にある茶色いビル5階
【脚本・演出】
長谷川優貴
【出演】
市川フー、zzzpeaker、高畑陸、二田絢乃
以上エンニュイ
浦田かもめ、オツハタ、小林駿
(50音順)
【タイムテーブル】
2023年
3月24日(金) 19:00
3月25日(土) 13:00/18:00
3月26日(日) 13:00/17:00
※受付開始・開場は開演の30分前
※上演時間約80分(予定)
【スタッフ】
ドラマトゥルク:青木省二(エンニュイ)
制作・演出助手:土肥遼馬(エンニュイ/東京軟弱野菜)・四木ひかり
映像:高畑陸
主催・制作:エンニュイ
【チケット】
<券種・料金>
劇場観劇チケット(当日精算・日時指定・全席自由)(予約・当日 別価格)
・一般 前売り¥3300 当日 ¥3500
・U-25(要年齢確認証提示) ¥2800
・エンニュイはじめて割 ¥3000
※「エンニュイはじめて割」エンニュイの公演を初めてご覧になるお客様は前売り価格より300円引きでご覧いただけます。
※「エンニュイはじめて割」は当日券でのご利用はできません。
予約ページ
【エンニュイとは?】
長谷川優貴(クレオパトラ)主宰の演劇組合/演劇をする為に集まれる場所 。
名付け親は又吉直樹(ピース) 「『アンニュイ』と『エンジョイ』を足した造語であり、 物憂げな状態も含めて楽しむようなニュアンス」
2022年11月に新メンバーを加えて、組合として再スタート
長谷川からのコメント
「文字通り、誰かの話を「きく」ことを主題とする作品です。他者が話していること、そのイメージを聞き手が完璧に共有することはできない
人間は、自己が体験したことから想像することしかできない。誰かの話を聞いている最中、私たちの思考は徐々にズレていく。言葉から連想して脱線したり、集中力が切れて別のことを考えたりするそんな、「きく」感覚をそのまま体験するような上演にしました。
僕は母親が未婚の母で母子家庭でした。親戚もいなくて唯一の家族だった母が数年前に他界しました。その時に作った作品です。亡くなったばかりの時に心配してくれた方々と話をした時にズレを感じて、話を聴く時は経験などによって想像や処理のされ方が違うのだと体感しました。別々である人間に共感を期待してはいけない。共感よりも大切なものがあるということと、他人への想像力の大切さを伝えたいです」
あらすじ
「母親が癌になった」
一人の男の語りから話は始まる。
最近、言葉が溢れていて聞き取れない感覚に陥る。
「きく」ことによってその話を「背負う」。
聞いた話の足りない情報を想像で埋める。
「きく」ことの大部分は想像。
そんな「きく」ことを体験できる公演。
2019年の初演のエンニュイ第3回本公演「きく」の感想ツイートまとめ
3月の公演へ行くか迷っている方へのご参考に!
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