宝石の国 連作句歌『Luminous』
生も死もはるかに遠き日永かな
春の宵うばはれるのを待つてゐる
博物誌めくれてふいに蝶の立つ
春眠や祈りになりそこなふ祈り
ああくらげきみはいつでもやさしいな
薄暑光欠けた手首の透るまで
赦されてしまふ苦しさ夏の暮
あぢさゐにつひに触れざる夜のこと
てのひらに剣おもたき水の秋
白粉花摘めば指から染む夕日
暮れ残る花野こんなに無力とは
砕かれしきみのつめたきひかり追ふ
遺言のやうだ声まで凍てついて
冬ざれに手を伸べ またもまぼろしか
雪解けて思い出せない名がひとつ
うすらひや強さとさびしさの相似
愛しても憎んでもだめ あなたには知られたくない罅をもつこと(ダイヤモンドとボルツ)
君に似合う仕事を見つけられなくてごめん 夕べの波はぬるいね(フォスフォフィライトとシンシャ)
春の潮満ちてここから夜の国 うそつきとはまだ言わないでやる(シンシャとフォスフォフィライト)
膝ゆるく折って氷に触れるとき君の名前がひどく遠いな(フォスフォフィライトとアンタークチサイト)