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精神科医がアルコール依存症について思うこと

 私は2021年4月から週1でアルコール依存症の外来をしています。
 それと同時にお酒を飲むのをやめました。私自身はアルコール依存症ではないのですが、アルコールをやめ続けるのがどれだけ大変か味わおうと思ったからです。今のところ「断酒」が継続できています。
 なぜ私は酒をやめることができたのか?理由として飲酒欲求がないからです。元々1人で酒を飲むことがなく、飲み会で飲んでいました(いわゆる機会飲酒)。コロナ禍で飲み会がなくなり、飲む機会がなくなりました。私には「渇望」がないので、飲む理由がなくなったら飲まなくてよくなったのです。
 アルコール依存症患者の中には治療の結果で飲酒欲求がなくなり、断酒が継続できている人がいます。飲酒欲求はあるのだけれど、頑張って通院して、頑張って自助グループ(断酒会、AA)に通って、頑張って抗酒剤(ノックビン、シアナマイド)を飲んで、なんとか断酒できている人もいます。(ちなみに「断酒の3本柱」は通院、自助グループ、抗酒剤を指し、断酒宣言を加えて「断酒の4本柱」といいます。柱が多ければ多いほど断酒はしやすくなります。)治療を受け、断酒が継続できるのはたったの3割と言われています。断酒を継続できている人はすごいです。自分を誇りに思って下さい。再飲酒してしまう方、人生をよいものにするために、何度でも断酒にトライしましょう。
 「自分はアルコール依存症じゃないか?」と思う方、ぜひアルコール依存症を治療できる病院の門を叩いて下さい。診察だけでなく、アルコール依存症リハビリテーションプログラム(ARP)を行なっている病院がいいです。
 例えば私の住む兵庫県なら、
兵庫県立ひょうごこころの医療センター(入院、外来の両方)
公益財団法人復光会 垂水病院(入院、外来の両方)
幸地クリニック(外来のみ)
宋神経科クリニック(外来のみ)
が挙げられます。
 もし病院に行くのがイヤだったら、断酒会やAA(Alcoholics Anonymous)に行ってください。自分1人では断酒はほとんど不可能です。だから同じような境遇の人が集まってプログラムなどをすることが有効なのです。
 アルコール依存症を放置すると、いろいろな物を失っていきます。仕事、家族、健康などです。だから失う前に治療しましょう。待ってます。
 アルコール依存症の患者さんの人生がよいものになっていきますように。

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