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【『クラフトビールフォアザギークス』全文無料公開連載第18回】ビアスタイル公会議
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ビアスタイル公会議
時代の変化
ロサンゼルスとサンディエゴのほぼ中間に位置するカリフォルニア州テメキュラは、内陸部に位置している。人口11 万人強のこの都市の合言葉は「古い伝統、新しいチャンス」で、1994 年6月に起きた出来事をうまく象徴している。伝統を破るだけでなく、舞台から体当たりで押し出すようなビールが登場したのだ。インディアペールエール(IPA)は、その機会に魅力を倍増させた。
地元のブドウ畑のオーナーの息子であるヴィニー・シルーゾは、当時テメキュラにあった「ブラインドピッグ」というブルワリー(閉鎖して久しい)のブルワー兼共同オーナーだった。このブルワリーこそ、彼が最初のビール「イノーギュラルエール」をつくったところだ。そこでつくっていたIPAのレシピをすべて2 倍にしたビールは、アルコール度数が7%弱、IBU(国際苦味成分単位)が100程度だった。このビールは、現代の米国発祥のビアスタイル(ビール醸造様式)の誕生を一気に告げるものであり、米国産ホップへの崇拝と苦味の軍拡競争の始まりにもなった。そう、ダブルIPAの登場だ。
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