自分次第
昨日のこと。
用事があって郡山までバスで向かった。
子どもの頃は乗り物酔いがひどくてバスはおろか、
自宅の車に乗るのも嫌だったし、電車も30分以上乗ると
具合が悪くなっていた。
それがいつの日か平気になって、今では本を読んだり
考え事をしたり、ぼんやりしたり。
家にいるときとはまた違う、時折窓の外を流れる景色に
目をやりながら過ごすそんな時間が好きになっている。
昨日もバスの中で読むつもりで持って行った本を開き、
数行読み始めたところで「ん??」と、
運転手さんのアナウンスが
気になって本を閉じた。
確かずっと前にもこの運転手さんのバスに乗ったことがあるぞ!
バスは停留所が近づくと、あらかじめ録音された女性の声で
アナウンスが自動で流れる。
のだが、この運転手さんは歌でも歌うように
調子をつけて停留所の名前を言う。これがまた気にし始めると
噴き出してしまいそうなくらい面白い。降りるお客さまへも
コンビニの店員さんの真似でもしているのだろうか?
独特のイントネーションで「アリガトウゴザイマシタ~⤴!」の挨拶。
顔見知りの乗客の方には
「久しぶりですねぇ」なんて和やかに
声をかけたりもしている。
本人はいたって楽しそうなのだ。
そんな様子なのでゆるいのかと思いきや、
ルールを守らない人(バスが停車する前に立ち上がってしまうとか)への
注意は大きな声で手厳しく、車内に一瞬緊張感が漂うほど。
なかなか掴みづらいキャラクターの持ち主。
久しぶりに乗ったなぁ。相変わらず面白かったなぁなどと
思っていたのもつかの間、帰りのバスもこの運転手さんだったのだ。
停留所のアナウンスは行きと同様。郡山方面行きのバスと違い、
三春方面へ向かう昼間のバスは、郡山市を抜けると
途端に乗客が少なくなる。私の他にはもう1人だけ。
バスも途端に軽くなったような気さえする。
川沿いのカーブが多い、くねくね道もスピードは落ちず、
漫画だったら「キキキキーーーッ」と擬音語が書かれるくらいの
Gが体にかかる。(あ、いや、あくまでもイメージですけど、
法定速度は守りつつのスピード感ってことです)
車窓から見える景色はのどかだというのに
さすがに本など読める状況ではすでになかった。
そして私以外の唯一の乗客が先に降り、
バスはいよいよ私ひとりの貸し切り状態となった。
「次は〇〇町バス停~〇〇町バス停~」
寄るところがあったので、行きに乗車した場所とは違う
バス停で降車ボタンを押した。
すると、
「〇〇町か~!」とがっかりした様子の運転手さん。
「はっ!?」と、びっくりしすぎて何も返事をしなかった。
というか、できなかった。
なんというか、おそらくあのがっかりは、脳内で勝手に自分クイズでも
やっていたのではないだろうか? たぶんきっと。
「最後のお客はどこのバス停で降りるのか?」クイズ。
ブブーッ。残念でしたハズレです。と、心の中で。
仕事を面白くするのも自分次第という出来事。
だったのかな?どうかな?