見出し画像

パンを買いに

家から比較的近い、ブーランジェリーカヌレさんへ
久しぶりに歩いてパンを買いに行った。
電動自転車でスイスイスイーっと行っても良かったのだが、
雪が一旦解けても、それが氷状態になっているところも
あるので用心してのこと。

晴れているからスノーブーツはやりすぎか?
などと家を出るときには思ったものの、履いていって大正解。
歩く人も稀なうえに、日陰の歩道はまだまだ雪が残っていた。
すぐ近くだからと甘くみて、自転車で行こうとしなくて良かった。
滑って横転なんかしたら大怪我をするところだった。
心配性も悪くない。

それに歩く速度でなければ目に入らないこともたくさんある。
今日は日当たりの良い畑のすみっこに、イヌフグリの群生が、
水色の蕾をふくらませて花を開く準備をしていた。
まだこんなに寒いのに、イヌフグリたちはまだかまだかと
早くも春を待ち侘びているのかと少し驚いてしまった。

遠くに見える冬枯れの木立は褪せた色。
それはまるでえんぴつで描いた線の集合体のように繊細だ。
だれーも歩いていない林を通り抜けて扉を開けると、
甘い焼き菓子の匂いと香ばしいパンの香りに包まれる。
家からゆるやかな上り坂の道を歩いて15分ほど。
そこにこんなに美味しいパンとお菓子のお店が
あるのは奇跡だ。坂道ではずんだ息を落ち着かせるように
美味しい香りを胸いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと
呼吸を整えていく。
菜月さんとの会話はいつも楽しい。
パンやお菓子が美味しいのももちろんだけれど、
店主夫妻との会話を楽しみにして足を運んでいる人は
私以外にもたくさんいることでしょう。
ただ美味しいだけではない、人柄がつくり出す
魔法のエッセンスだな、きっと。

帰りはホクホクした気持ちで来た道を引き返す。
今度は遠くに頭が厚い雲で覆われた安達太良山。
裾野は雪で真っ白だ。
寒い寒いと言っていても、あと3カ月もすれば桜が
咲き始める。そんなことが頭に浮かんでも、決して
焦ることもなく「あぁそうかぁ」という程度。
歩く速度が程よく頭の中をほぐしてくれたのかもしれない。