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願い事

もしも一生に一度、願い事が叶うなら
何をお願いするでしょう。

そう聞かれてすぐさま頭に浮かんだことといえば、
家族や友人が心身ともに健やかに過ごせることだろうか。
何もいい人ぶっているわけではないのだが、
今は願い事をするならそれだけって
けっこう幸せなことなんじゃないかと思っている。

少し前のこと。西会津にある山の神様、大山祇神社へ行ってきた。
ここは「三年続けてお参りすれば、なじょな(どんな)
願いも聞きなさる山の神様」と伝えられている神社だ。
夫は幼稚園の頃に両親に連れられて行ったことがあったそうだが
それ以来。最近になって知人に久しぶりにこの神社の話を聞いて、
先日も一緒に山に登ったKUU先生も誘って行ってみようと
いうことになったのだ。

三春町からは車で高速を使って1時間半ほどだが、
普段はなかなか訪れることのないエリア。
登山口には立派な拝殿があり、ここで木札に願い事を書いて
参拝をして帰ることもできる。
が、一生に一度の願い事をするならば、やはりお山の上にある
御本社へお参りをするべきだろう。
私たちは山へ登る前にまず拝殿で参拝をし、願い事の木札は
帰りに書くことにした。

幼稚園児も登れた山ならば…と、若干甘く考えていた。
確かに比較的なだらかな道も多いが
念のためにとストックを持って行ったのは正解だった。
先日の磐梯山とは違い、登山客はどうやら私たちだけらしい。
前日の天候とは打って変わり、風もない穏やかな小春日和。
山頂に向かう途中にいくつもある滝や川、苔むした木立に
きのこの群生地など、クラクラするほど自然の気配が濃い。
ヒトが自然の威力には敵うわけはないことを
いやでも思い知らされる美しさと迫力だ。

あと少し、あと少しと思いながら歩みを進めると、
もののけ姫の森を思わせる、樹齢400年以上の
木々が根を這う道。その先に続く202段の石段を
目の前にして喋る余裕などすでに無かった。
階段脇にあった岩の上に積み上げられた小石は、
いつのものなのか積み重ねたかたちのまま
苔むしていて、お百度参りの数を数えたものだろうか。
この石段を登って御本社のお百度参りをしてまで叶えたい
願い事は何だったのだろう。

やはり私の一生に一度の願い事は今はないようです。
こんな秋晴れの日にお参りに来れただけでも十分です。
ありがとうございます。
御本社での参拝ではそう告げた。
社殿は何の木でつくられているのだろう?桐の木だろうか?
白く清らかな印象の美しい社殿だったなぁ。
参拝を済ませた帰り道では陽の当たる川沿いの場所に
三人で腰を下ろし、コーヒーでお茶っこタイム。
KUU先生がブーランジェリーカヌレさんのカヌレを
おやつに持って来て下さった。
何をしたというのでもないのに、任務が完了したような、
ホッとした心地で飲むコーヒーとカヌレは最高に美味しかった。

無事に、無事に。
神様へ懇願しなければならないことが
起きないのが何よりということなのかもしれない。
でもお願い事はなくとも訪れたいと思える清々する場所。
帰りに寄った鳥追観音の近くのお店で食べたお蕎麦も
大変美味しゅうございました。
そうそう。西会津町のPR動画が面白かったので
ご興味がある方はぜひ。