【劇評172】新型コロナウィルス下の「対面」上演のむずかしさ。
九月の歌舞伎座は、四部制の第一部に『対面』がかかった。言わずと知れた曾我狂言の代表的な作品であり、きわめて様式性が強く、歌舞伎座の間口の広い舞台をさまざまな人物が埋め尽くしていく。
芯となるのは、「工藤館」とあるように、座頭役の工藤祐経で、今回は梅玉が勤める。立女形が勤める大磯の虎は、魁春。六代目歌右衛門の手元で育ったふたりが、工藤と大磯の虎かと思うと、ゆかしい心地がする。
この工藤に立ち向かうのは、松緑の五郎時致と錦之助の十郎祐成。
荒事と和事の代表的な役だが、役者の仁と柄が共にとわれる。怒りと柔らかさのせめぎ合いを愉しむ劇である。
今回、『寿曽我対面』の骨格を体現していたのは、又五郎の小林朝比奈と、歌六の鬼王新左衛門。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。