【劇評246】偉大なるマンネリズム。菊五郎劇団の『南総里見八犬伝』
いつもと変わらない正月を迎える嬉しさ。国立劇場の初春公演は、菊五郎劇団総出演の『南総里見八犬伝』が出た。恒例の復活狂言は、実質的には古典の様式を生かした新作に近い。今回は、歌舞伎がもっとも大切にするべき四季を劇中に織り込み、目で楽しむ娯楽作品に仕上がっている。
『南総里見八犬伝』の原作は、百六冊に及ぶ。歌舞伎化された上演台本も数々ある。どの場を組み込み、構成していくかで、舞台の印象はまったく変わってくる。
伏姫と愛犬八房の場面は、演出によっては綺譚の魅力がある。今回は、劇の背景とこの発端は、扇谷定正、里見義実、伏姫、八房のパネルを、菊之助のナレーションで説明していく。伏姫と八房によって八つの珠が飛び散っていく場面は、あっさりとしている。このナレーション部分で使われる録音の音楽は疑問。正月だけに生の音で冒頭は飾ってほしかった。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。