ローカルマーケティングは、地元活性化の特効薬になるか?2つの課題と欠けている視点
コロナ禍で、エリアマーケティングを放置してきた店舗の経営基盤や集客の脆弱性が明らかになった。
愛着がある人が多いにもかかわらず、地元のスモールビジネスはどんどん減り、代わりにマーケティングに長けたチェーン店がその穴を埋めていくだろう。
地元のスモールビジネスは、どうすれば生き残れるのか?
その特効薬となりうるローカルマーケティングの選択肢は増えてきている。
ローカル マーケティング (または、ご近所マーケティング、地元拠点型マーケティング、ローカル ストア マーケティング (LSM)) とは、特定の地域の消費者をターゲットとした宣伝戦略を指す言葉です。地元でチラシを配ったり、メールで地元の人にクーポンを送ったり、地域のイベントで宣伝をしたりといった、伝統的なテクニックを指すこともありますが、一方で、地元に焦点を置いた 最新のデジタル マーケティング ツールの利用を指すこともあります。
Microsoft 365 Team「ローカル マーケティングを始めるための完全ガイド」
最新のデジタルマーケティングツールとして、GoogleもGoogleマイビジネスを押してきているし、Facebookも中小ビジネス助成プログラムを始めた。
ただ、こうしたローカルマーケティングを取り巻くノウハウは「What」や「Why」を提示しているだけで、それを分解した「Why」の事例や使いこなすリテラシーの量は、まだまだ、まったく足りていない。
ローカルマーケティングの課題1:Whyの事例が少ない
ローカルマーケティングでは、地域・業態・店の特徴・担当者とで取るべき戦略が異なる。「自分の手で試しながら」が重要となる。ある地域の事例が、隣町になったらまったく通用しないケースなどが多い。
繁盛の方程式は、大企業よりよほど複雑かもしれない。その上、使える予算やヒューマンリソースはほんのわずかだ。
また、最新の手法が昔ながらの手法より優れているということもない。ローカルビジネスの集客手法で見落とされがちなのは「オールド手法の方が、成果の出るケースも多い」ことだ。
例えば、飲食店がチラシで10人来店させるのは、かなり簡単だが、SEOで同じだけ集客するのはかなり大変だ。「SEOに取り組んでいたけど全然成果が出ず、チラシを撒いたら、すごく簡単に客が来た」ケースは多い。
逆に、オールド集客手法のデメリットもたくさんある。
・リスクが高い(出すまで結果がわからない・途中で止められない)
・成果がよく分からない(何人に見られて・正確に何人が利用したか分からない)
・予算の下限が大きい(例えばポスティング1万部で7万以上かかる)
結局、「誰にアプローチする?それはなぜ?」が重要で、HOW(手段)ありきの「流行っているからInstagramを始めよう」「時代はMEO対策と聞いたのでGoogleマイビジネスに取り組もう」ではダメなのだと思う。
わかりやすいWhat(何を使う?)やHow(使い方)だけでなく、Why(なぜうまく行ったのか?)に注目した事例をもっと蓄積していく必要がある。パン屋がInstagramで成功しても、隣町の居酒屋がInstagramで成功するとは限らない。
ローカルマーケティングの課題2:食い物にされがち
持続的な成長や関係構築が求められるローカルマーケティングにもかかわらず、小手先な手段やリテラシー不足に付け込んだ「勉強になりました提案」が多い。
「今風のサイトを作る」「Instagramキャンペーンをする」「ECを作る」「MEO対策で上位表示させる」「Twitterを始める」それだけで満足してしまう。
主にはデザイン制作会社や広告代理店が主導で「それっぽい」クリエイティブをつくって、かっこいいアウトプットを出したことで満足しているケースが多い
このnoteで触れられているのは「地方」の問題だが、都心から離れた地域でも大なり小なり同じようなケースはある。
情報が溢れる時代において、情報格差はないが、情報を提供する側の倫理と、店舗側の情報を選択し、自分の手で頭で実行するマメさが必要だ。
ローカルマーケティングに必要な視点は「長期的な関係構築」
地域店は、お客さんの候補数が限られる。リピーター作り、地元や見込み客との長期的な関係構築が要だ。地元で評判が広がるのは速いし、悪い評判ほど広がる。レビューをGoogleマップやSNSでチェックする人も増えている。
短期的な集客に溺れてはいけない。
例えば、ローカルビジネスの個人店は「オープン需要」の錯覚にハマることがとても多い。人は「新店舗」が大好きなので、オープンしただけで注目を集められるし、集客施策の質にかかわらず「耳に入れば一度は集客できる」状態になる。
しかし新店ができ、3ヶ月後にかなりの店が潰れるのを毎日見てきた。「話題性による周知効果」や「とりあえず来店」がある間に、真のファンや店舗の魅力を見出せないと、次の順番待ちをしている新店に塗り替えられてしまう。
・オープンにホッとする
・お客さんが来てホッとする
その気持ちはとてもよくわかる。しかし「軽い気持ちで来店」は、お客さんの記憶に残っていないことが多い。語りたくなる体験や持続する集客資産としての口コミ作りに取り組む必要がある。
「戦力の逐次投入」を選んでしまう店が多い
「繁盛店」と「閉店してしまう店舗」の違いは「最初のスタートでどれだけアクセルを踏むか」にかかっている気がする。
しかし、実際には「戦力の逐次投入」を選んでしまうことが多い。デジタルのローカルマーケティングの多くは「無料で始められる」というのも大きいかもしれない。
持てるリソースを小出しにして、少しずつ様子を見ながら展開していく戦術を「戦力の逐次投入」と呼び、最も拙劣な戦術と批判されます。1万人以上の米軍に数千人で突撃したガダルカナル戦が有名
もちろん地域性・キャッシュフロー・ビジネスモデルによっては「ゆっくり良いお客さんだけを相手にしたい」モデルも成立するケースもたくさんある。
が、それはそれでシビアな競争があるし、経営基盤がしっかりしている必要がある。最初は「じっくり」と思っていても、貧すれば鈍するで、悪路にハマるケースを見てきた。
こうした事例はローカルビジネスのビジネスモデルのあり方のまだまだ一端にすぎない。ローカルマーケティングはもっとアップデートされないといけない。