労働災害に関する訴訟リスクと企業の資力確保の必要性
こんにちは!
今回は法人向けの損害保険に関する情報発信であります。
企業活動を営むなかでどれだけ気をつけていても労働中の事故はゼロにはなりません。
例えば、建設現場で高所作業をしている作業員の方が定められたハーネス等の安全ベルトの着用を「動き辛い」と不完全な状態で作業を行い転落事故等を起こしてしまったら?
繁忙期で長時間労働が続き、上司からも早く帰るよう言われていたがなかなか早く切り上げられず、ある日の残業中にその社員が倒れたら?
この場合、会社側の責任はゼロなのでしょうか?
そんなことはありません。
労災保険、労災という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。
もし、業務下で事故が起こってしまうと労災保険から保険金が支払われることになります。
ですが、労災保険だけでは万一の際には不十分であることが多くあります。
【労災保険の目的】
労働者の社会復帰の促進するもので、事故が起こった場合の支払いは下記2点を鑑みて行われます。
・業務遂行性
→労働者が使用者の支配下にある状態。
・業務起因性
→業務に起因する事。
過去3か月の平均賃金から給付基礎日額を計算し補償される。(休業、障害、遺族年金など)
しかし、労災保険は慰謝料や働けない事による逸失利益を前提としていないため、それらを必要とする場合は被災者等が訴訟を起こす必要があります。
従来では被災者側が使用者側(会社)の不法行為責任を立証しなくてはいけなかったのが、昨今は使用者側の安全配慮義務違反を債務不履行責任の観点で問うようになりました。
・裁判でよくある争点
①業務と自殺等の結果に因果関係があるか
②会社に注意義務、および安全配慮義務違反があったか
③被災労働者の性格や家族の対応などを損害額算定の際に減額事由として考慮すべきか
企業は対策をいくら講じていても、実際に労働災害が起こってしまったら、安全配慮義務を果たしていた事を立証しなければならず圧倒的に弱い立場となります。(社員が勝手にやったことだとは逃げられません。)
例えば、長時間労働のストレスによる疾患や、作業現場での事故などは管理者がいかに管理をしていようとも起こってしまうし、仮に本人の責任で起こった事故であったとしてもその責任の一端を会社側が問われてしまう可能性があります。
その場合、被災者への手厚い補償を準備したり、最悪の場合には賠償金支払いに備える補償が必要となります。
そこで、使用者賠償責任保険や業務災害補償保険が必要となります。
(訴訟をされる企業の資力確保のため)
労働災害が発生した場合、被災労働者またはその遺族は労災補償を受ける事ができますが、同時に使用者に対して損害賠償請求を行うことも可能(労災民事訴訟制度)となります。
労災補償制度(労災保険)は、社会復帰を前提にした制度のため、精神的損害(慰謝料)や逸失利益などの考え方がないため、これらも含めて実損害のすべての回復を図るためには、被災労働者等は使用者に対して労災民事訴訟を提起しなければならなくなります。
従来は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、715条(使用者責任)等)が中心でありましたが、その場合、被災労働者等が使用者等の故意・過失を立証しなければならず、それは非常に困難なものでした。
昭和40年代後半から下級審判例において労働契約に基づく使用者の安全保護義務の概念が認められ、債務不履行責任(民法415条)に基づく損害賠償請求が可能になり始めました。
この方法を用いると、裁判における立証責任が使用者側に転換される点、また時効期間が不法行為に比べて長く10年である点でも被災労働者側に有利となりました。
昭和50年2月、「国家公務員と国の安全配慮義務」では、使用者(国)が安全配慮義務を負う事を初めて最高裁判決として明言しました。
その後、安全配慮義務については、民間企業の労働契約関係においても認められる至りました。
なお、安全配慮義務は労働契約法5条に明文化され、2008年3月に施行されました。
「改正民法(令和2年4月1日に施行)」では法定利率の見直し(5%→3%)がされており、それにより割り戻した賠償金が高額になる事、また定期金賠償が認められた事からも賠償金額がより高額になり得る状態となり、より企業側の立場は悪くなっています。
これらを背景に企業側の訴訟リスクは従来よりかなり高まっており、企業規模によっては事業の継続も危ぶまれる可能性があるため、その際の賠償リスクに使用者賠償責任保険等で備える必要があります。
過去、高額なものでは約1億9,000万円の賠償命令が下った判例もあり、このような賠償命令を受けると多くの中小企業はひとたまりもありません。
実際にあった高額賠償事例
ここまでのものでなくとも、数百万〜数千万円単位で賠償はたくさんあります。
その数百万円の利益を上げるために一体、その何倍の売上が必要でしょうか?
ここまでの説明に加えて、弁護士人口の増加、ネットで何でも調べられるようになった環境変化などもあり、以前より訴訟を起こしやすくなっています。
また、そうだからと言う訳でなく、そもそも社員と会社の双方のために適切に備えることの必要性は高いと思います。
会社を経営されているみなさんには是非考えていただきたいトピックです。
はせたく
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