26歳の夏休み

2024年8月4日、PK shampoo主催のPSYCHIC FESに行った。場所は大阪、心斎橋。私は大阪に降り立つこと自体初めてで、緊張と不安と楽しみで朝から気分が悪かった。「この場所でオフ会でもあるの?」というくらいTwitterのフォロワーたちが集まっていて、会えなかった人たちを含むと20人以上はいたんじゃないかと思う。
私はシンプルにライブを楽しみたい気持ちと、それにプラスして会いたかった人たちにたくさん会えるぞ!という楽しみがあった。なんせ住んでいるのが沖縄という離れた土地なのでインターネットで知り合った人々と会うということ自体、物理的ハードルが高かった。とはいえ私は地方民の中では多分わりかし遠征しているほうだと思う(なのでめちゃくちゃレアなユーザーではないし、会おうと思えば割と簡単に会えてしまう)。

フェスといっても様々なフェスが存在しており、今回参加したのはサーキットフェスというもので町全体のライブハウスを使い、好きに出入りを行うようなものだった。有名なサマーソニックやフジロック、ロックインジャパンのような大規模なものではない。だが、アーティストの数は40を超えており、アーティストが主催するフェスの中では大規模なものだと思う。

私は主催バンドのPK shampooを全くと言っていいほど聞いたことがなかった。周りの子たち(ここでいう周りの子というのはTwitterのフォロワーのことだ)に聴いている人が多いのでもちろん名前は知っていたのだけど、いつからか音楽を自ら聞き入るのが難しくなってしまった。年齢のせいかわからないが、全てが受動的になりつつある。だから私が今聴いているものといえば昔から慣れ親しんできた音楽たちで真新しいものはあまりない。
それなのにPSYCHICに行ってみようと思ったのは「慣れ親しんでいるバンド」が多かったことと前述のとおりたくさんのフォロワーたちにいっぺんに会えるという下心のようなものであり、それを考えると純粋にバンドを見に来た人たちに失礼なようにも思えてくるがとにかく私はそういう理由で全く聞きなじみのないバンドの主催するフェスに参加したのだった。


psychic fesのタイムテーブル

私はタイムテーブルとにらめっこした。というかタイムテーブルが発表された時点で行く人みんな口を揃えて「これはどう回りゃいいんだよ」と多少キレ気味で話をしていた。どのアーティストも30分という持ち時間で(主催のPKは除く)ほとんど休みなく、あれもこれも見たいと思っていたがここまでの被りがあるとそうもいかない。ライブ前に「こうやって回るか」と計画を立てていたとしても想定通りいく人は少なくそれがフェスの醍醐味といってもいい(そんなことはない)。
私は周りの人たちと比べると恐らく予定通りに回れたほうだと思う。
(16時過ぎの大きく空いてる枠は元々山田亮一が出るはずだったのだがライブの2週間前に大麻所持で逮捕され、ライブ主催者側もファン側もみんなもう笑うしかなくなっている状況で当日はPKによるハヌマーンのコピバンが披露された)

12時openの13時start。12時半くらいにBIG CATに入りドキドキしながら待っていた。すると13時になる少し前にPKshampooのボーカル、ヤマトパンクスが開会宣言とし法被を着て登場。
「皆さん安全安心楽しく見てってください!泥酔者は入れません!僕が入れなくなる可能性がありますがそこは目をつむってもらって…」などジョークを交えながら注意事項を伝えはけていった。

まず私はバックドロップシンデレラをみた。バクシン(バックドロップシンデレラの略称)の音楽を一言でこうです!というのはかなり難しくてどのバンドもそうだろと言われればそうなのだが、バクシンにしかない音がそこにはある。本人たち曰く「ウンザウンザ」なのだそうだがウンザウンザが何かと聞かれても私はよくわからないし、バックドロップシンデレラを一言で表すなら「ウンザウンザ」が一番しっくりくる。彼らは一貫してウンザウンザを謳っておりウンザウンザを踊っている。私は彼らのライブを見るのが8年ぶりでほぼ新参者と変わらない戸惑いを見せながらライブに挑んだ。8年という時を経ても全く変わらないパフォーマンスや音楽性に感動し、ファン層も変わらず良いままなのがすごくよかった。バクシンのライブを初めて見たときモッシュもダイブも怖くて日和っていたのに何故か彼らのライブで起こるモッシュは全然痛くない(異論は認めます)。年齢層が高いこともあってかモッシュの仕方を熟知している紳士淑女の方々が多いのだと思う。古参にも優しく(古参というか私は時代が10年前で止まっているだけなのだが)昔の曲もやってくれてそのままでも楽しめた。でんでけあゆみがこれでもか!というくらいステージからダイブをし支える私たち。「分かれろ!分かれろ!」と何度も行われるウォールオブデス。初っ端これだったのはむしろ良かったと思う。テンションを朝から(バンドマンの朝は遅い)上げてくれて次にいけた。MCで「みんな心配してると思うけど大丈夫だから。ヤマト変な薬やってないから!ヤマトは俺たちが守るから!」などと山田亮一をいじるようなことを話していて会場がどっとウケていた。
私は会場そのままドミコを見た。ドミコは2ピースのバンドで普通みんなが想像するのは「まあライブだとサポートいれて4人とかなんだろうな」って感じだと思うのだけど、彼らはライブでも二人でやる。ギターのさかしたひかるがルーパーを駆使し音を何重にも重ねて音源通りの音をライブでも出す。初めて見たのがこれも8年前とかなのだがとにかく驚いた。「え!?二人なのにこんな音になるの!??まっっっっじで意味がわからん」これが率直な感想。ドミコは割と沖縄にもライブに来てくれるので何度か見ているんだけれど見るたびに「ああすげえ」と思う。フェスで見るのは初めてだったのでどういう風にやるのかドキドキしていたのだけどワンマンと変わらず彼らのペースで淡々とライブを行っていた。ワンマンライブではよくやるのだがドミコの二人は急にセッションが始まる。二人だけの時間に私たちが紛れ込んでしまったかのような空間になる。長いと10分以上そのセッションは行われるがワンマンでもない30分しか持ち時間のないフェスという場所で二人はセッションをはじめ(ペーパーロールスーパースターのラストサビ前)そのまんまである彼らに驚き喜び私はニヤつきが止まらなかった。
そのままドミコを最後まで見たかったのだが、HOKAGEでthe bercedes menzを見るために私は途中で抜けた。ひとりのフォロワーと一緒に回っていたので走って向かったのだが、いざ着いてみると行列。HOKAGEのキャパは120人程度。に対して並んでる人は100人を超えていたと思う。最後尾まで走り取り合えず並んでみたものの「ねえ、これって今いる人たちが全員はけても多分入れないよね」と話した。私も一緒にいたフォロワーもベルセデスを見たかったのだが諦めてFAN Jへ向かった。トップシークレットマンを見たいが故に小林私から見よっか。となり会場へきたが、そこに鳴るの演奏中でとりあえず(好きな方がいたら嫌な言い方かもしれない、すいません)ぼけーっとみていた。そこに鳴るは凛として時雨にとてつもない影響を受けており、聞けばそれがすぐにわかるのだがどこかにPOPさがあり、ただのオマージュやパクリなんかではなく、それでいてオリジナリティである。だから全くの別物という感じなのだが、私は凛として時雨が大好きなので逆にあまり好きになれなかった。彼らがはけ、小林私がサウンドチェックで出てきた。FAN Jは舞台に幕がはってあり、登場すると共に幕があがる(実際には横にずれるカーテン方式)。幕越しに小林私が見え「今実は全裸なんですけど」など意味不明なことを言っていた。私は小林私の音楽を聴いたことがなく、どういう人なのかもわかっていなかったのだがライブはアコギ一本弾き語りなのにものすごく迫力があり凄まじさを感じた。歌がどう以前に本人の歌唱力が群を抜いている。しゃがれ、がなり、クリア色んな声を兼ね備えながらそれでいて繊細さもある、そんなアーティストだった。だけどMCで喋るたびに目立つ「オタク感」。というか普通にオタクだった。「え?今って令和だよな?こいつ何年前からやってきたんだ?」と言いたくなるような典型的オタク。喋れば喋るだけちゃんと気持ちが悪く、個人的にはそこで好感度があがってしまった。「みなさん!Spotifyを今すぐ解約してDアニメストアに加入しましょう!」彼はそういい皆にアニメを見ることを強く勧めていた(ちなみにDアニメストアは500程度で入れるので普通にSpotifyも入りつつDアニメも入ってください。)。
そして待ちに待ったトップシークレットマン。待ちに待ったといいはしたが正直怖さのほうが勝っていた。客層があまりよくないと噂されているのとライブが激しいときいていたので図らずして最前にきてしまった私は「大丈夫かこれ」と思いながら構えていた。先ほどの小林私同様、カーテンの向こう側でサウンドチェックなどを行っていて、でもなぜか「もうそのまま本番やっていいかな?」といいカーテンを開けライブが始まった。その時点で恐らく入場規制がかかっており小さなライブハウスはパンパンだった。最前の私は後ろから信じられないほど押されて胸の形が変わるかと思った。ていうか多分少しは変わったと思う。FAN Jはステージが高い位置にあり、手前には柵のようなものがある。後ろから押されに押された私はその柵に乳が押しつぶされており、途中呼吸がしづらく本当にぶっ倒れるかと思った。そんな私をみたスタッフの方が「大丈夫!?」と何度か声をかけてくれた。私はウンウンと頷くのみ。ライブ自体は低音がこれでもか!というくらい響いており、内臓を殴られているのかと錯覚したくらい。でもライブハウスは音がデカければデカいほどいいとされているのでかなり良かった。ダイバーも続出していたが、前で降ろされるのではなくそのまま後ろに転がされていて「そんな戻し方あるのかよ」と一人でつっこんだ。ライブハウスが信じられないほど熱を持ち、ふらふらになっていた。スタッフさんの粋な計らいか(私がずっとしんどそうなのをみて)セットリストを私にくれた。

実際にもらったセットリスト

信じられないほどの汗をかきボロボロになった私たちはコンビニへいってパピコを食べ休憩した。冷たい麦茶を飲んで次に備える。それまで一緒にいたフォロワーはthe dadadadaysをみてくる~とそこで一旦解散。私はアルカラを見たくてまた先ほどのFAN Jに戻った。他の客もそちらへ行っているのかアルカラはそんなに満員という感じではなく年齢層も割と高めだった。アルカラを見るのも7、8年ぶりで下手したらアルカラのライブで頭部流血させたとき以来かもしれないと思った。今日は変なダイバーがいませんように…とおびえていたのだが、アルカラのライブは滅茶苦茶静かでおとなしかった。私がしっているアルカラのライブはモッシュもダイブも起きるのだが全くといっていいほどそれがなくファン層が違うからなのか時の流れが残酷だということか、わからないがみんな大人しく見ていた。久しぶりに見たのにも関わらずたいすけさんはヴァイオリンも弾いてくれて色々なアルカラを見ることができ嬉しかった。アルカラも最後まで見たかったのだがキュウソネコカミをちゃんと見たくて私は再びダッシュした。先ほど別れたフォロワーが「ちょっとずつ人が増えてきてる」と教えてくれて急いで駆け込んだのだ。私はなんとか入ることが出来てトイレも済ませた。トイレで良いDJが聞こえてきて「なっつかし!」と叫び急いだ。リハでやってただけなので急ぐ必要はなかったのだが、久々に見るのもあって心が先走っていた。
彼らはリハを3曲ほど行い、トップシークレットマン同様はけずそのままライブを始めた。「何年振りに見るかな」とワクワクしていたのは確かだが、多分今思うと2年前のロッキンで見てるかもしれない。気分的には10年ぶりだ!と思っていたけど全然そんなことなかった。新旧色んな曲をやってくれた。キュウソは写真撮影NGだったのだが「次の曲だけは撮影オッケーです!」と言って始まったのがDQNなりたい、40代で死にたい。ライブ定番曲でキュウソそんなに知らないけどこれはわかる!という人も多いはず。800人の人間が「ヤーンキー、こーわいー」と大合唱。セイヤさんが客席にダイブしてみなの上に立ち歌う。2年前のロッキンで確かにキュウソネコカミを見たが、当時はコロナ禍真っ最中。声は全く出せないし最前列側にはマスがあった。ダイブなんてもっての外、声出しも出来なかった。だから今目の前にある光景が本当に懐かしく嬉しく感慨深く思った(DQNの時にそんなこと思うやつは私くらいしかいないかもしれない)。
みんなでびっちゃびちゃになってライブが終わりトリであるPK shampooが出てきた。私は彼らを全く知らない。が、ライブを見て本当に芯があるんだということはわかったし、みんなが好きな理由もわかった。今回当日キャンセルや山田亮一の逮捕なんかもあって主催者側はかなり大変だったと思う。けれどもヤマトパンクスは「まあこれくらいのハプニングがなきゃ面白くないよな」とかなり楽観的にポジティブに捉えていてそれだけで好きになれるなと思えた。私は後ろでゆったりみていたが前のほうでは雪崩も起きていたらしく何度か「大丈夫か?」とヤマトパンクスが声掛けをしたりしていた。「スマホなくした人いないか?」「500円ひろった?もろとけもろとけ」曲を中断してファンを気遣うさまなどはあまり多く見られないよなあと感心したりもした。曲を全く知らないからそれっぽい感想をなにひとついうことが出来ないのだがとにかく心暖かくなるようなライブだった。

ライブが終わったあと集まろうと声をかけたわけでもないのにフォロワーが何人か集まり集合写真なんかも撮った。

フォロワーたちと一緒に撮った集合写真

最近は「フェスに何しに来てんの?集合写真撮るなんて迷惑」という意見もあるらしいが私はこういう風にみんなと記念を残していきたいなあと思うし結構好きです。10年後写真を見返すときにみんなわかるはず、思い出になる(半分はフォロワーに会いたくてライブに来たいってたやつが何を言うか、というのは無しでお願いします。)
朝から晩まで音楽を浴び、休む暇もなくヘロヘロになった。26歳、夏休みの思い出としてこの日のことを覚えていたい。

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