クリエイティブリーダーシップ特論:2021年第7回 高濱正伸氏

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第7回(2021年5月24日)では、花まる学習会代表の高濱正伸さんから「心」についてお話を伺いました。

高濱正伸氏とは…

 高濱正伸さんは1959年熊本県生まれであり、県立熊本高校、東京大学、同大学院修士課程を経て、1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した、小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」を設立した。「情熱大陸」(毎日放送/TBS系)、「カンブリア宮殿」(テレビ東京)などドキュメンタリー番組にも出演し、注目を集めている。現在、算数オリンピック委員会の理事も務める。主な著書に、『なぞぺー』シリーズ(草思社)、『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)、『子どもに教えてあげたいノートの取り方』(実務教育出版)、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)などである。

「心」で世界を眺めるとは…

 高濱さんによると、幸せとは「心」(脳の芯)で世界を眺めることで感じることができるとのことである。コミュニケーションで重要なのは、「心」と「心」の共振なのである。逆をいうと、不幸だと感じる人は「頭(脳)」で世界を理解しているだけであり、「頭」のみで人とのコミュニケーションをし、「心」を抑え込んでいるのである。ただし、全て「心」で感じればよいというわけではなく、自制心という「心」を抑え込む必要がある場面もある。
 例えば、親子において、母と子は心で感じているため、感情が反応しやすい。一方で、父は母を頭で理解し、処理してしまう。父は母の「心」を感じ、「心」と「心」を共振させることが重要であるにも関わらず、頭で理解して処理するためすれ違いが生じるのである。

よくある親子のケース/
母 ⇄ 父 :父は母を頭で理解する
  ⇅   :母と子は心で感じる
  子

 高濱さんは、20代の間、ご自身の心を震わすものをかひたすら探し続けたとのことである。例えば、午前に哲学を独学で学び、午後に同級生と議論する、海外旅行では名所を見るのではなく地元の子供と遊ぶ、など、自分が何にビリビリと感じるか追い求めたのである。そして辿り着いたのが教育(子供)であり、いまに至るのである。高濱さんによると、自分の心をモニターして、行動し、振れ幅を広げる、ことが重要であり、しっかりと「心」に向き合い仕事を選ぶべき、とのことである。本当に最高で好きなものを仕事にしている人は、毎日心が震えており、毎日が楽しくなり、輝くのである。

「見える力」、「やり抜く力」とは…

 「心」を震わせた上で大切になるのが、「見える力」「やり抜く力」である。「見える力」とは、誰も思い付いていないものを思いつく力、誰も見えていない本質を見抜く力である。高濱さんとしては、この「見える力」が頭の良さの要とのことである。「心」を震わせたとしても新しくないと仕事にならず、「見える力」が重要なのである。

 そして、「見える力」で見つけた課題に対して、逃げずに最後までやり切る力が「やり抜く力」である。つまり、負けない心である。

 高濱さんによると、これら「見える力」「やり抜く力」は起業家の必須要素であり、起業家とは下記のような人々とのことである。もちろん処理能力も必要かもしれないが、それだけでは幸せを感じることはできないのである。

起業家の要素/
・人生を楽しんでいる
・課題が見える(「見える力」がある)
・やり切る(「やり抜く力」がある)
・人を説得できる(人と人とのコミュニケーション力がある)

自由研究とは…

 授業の最後、高濱さんは自由研究をしてみてください、とおしゃった。テーマは就職でも夫婦でも何でも良く、例えば夫婦をテーマとしたら、どうしたら幸せな夫婦になれるのか、を研究するのである。夫婦は多種多様であり、夫婦となる時は神様のプログラムに従いくっつくが、何故か夫婦になった途端に分かりあえなくなる夫婦が多いのである。高濱さんによると、それは相手の「心」を見ていないからであり、相手がどんな時に幸せか、どんな時に何が心に届くのか、それは何故かを調べることが必要なのである。単に相手に効果があることのみを調べても意味がなく、何故かを考えるのが重要なのである。
 つまり、自由研究とは、他者をしっかり見て、その人の「心」を見て、その人の文化や人生などの背景もふまえて、自分なりに研究するのである。そうすることで、「心」に焦点をあてて世界を見ることができ、幸せに近づけるのである。

授業にて特に印象深いことは...

 私は出産・子育てにおける親の孤独・孤立について研究しており、高濱さんの話はとても参考になった。特に「心」や「心の共振」という言葉はとても印象深かった。私として「心」と孤独のつながりについて興味があり、「心」で感じるためには孤独も必要と思うか、と高濱さんへ質問してみたところ、自分を見つめる時間(内省など)が必要とのことであった。自分を見つめずに誤魔化すと、うまく「心」で感じることができず、自分を見つめることで「心」を通して世界を見えるようになるとのことである。そして、夫婦や親子関係においては、お節介屋さんの介入も必要であり、夫婦以外や親子以外の繋がりにより、それぞれの「心」の繋がりがより強固なものとなるとのことであった。
 私は、孤独を経ることで「心」の感度が固まると感じており、そして「心」の感度が創造力に繋がっていると考えている。孤独=ダメなもの、ではなく、孤独とどのように付き合うかが重要なのではないかと思った。授業を通じて、私も「心」を大切にしていきたいと思った。


 

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