クリエイティブリーダーシップ特論:2021年第8回 MIMIGURI社

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第8回(2021年5月31日)では、MIMIGURI社代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さんから「問いのデザイン」についてお話を伺いました。

安斎勇樹さんとは…

 安斎勇樹さんは、1985年生まれ、東京都出身であり、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程を修了である。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。主な著書に『問いのデザイン-創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。 

MIMIGURI社とは…

 MIMIGURI社は、Mimicry Design社とDONGURI社が2021年3月1日付で合併してできた会社である。「創る、研ぐ、語り継ぐ。知を循環させる生態系。」を目指しており、提供サービスは大きく3つある。

CONSULTING/
創造的な組織と事業を創りだすコンサルティングを提供している。人材育成、組織開発、制度設計、事業開発、ブランド開発などの専門性を有機的に組み合わせ、クライアントが置かれた問題の本質とあるべきビジョンを見定め、課題解決をファシリテートする。

RESEARCH/
社内に研究チームを組成し、組織の創造性に関する総合知の体系化を目指して、研究開発に取り組んでいる。先行研究のレビュー、フィールド調査、現場の実験、学術論文の執筆、書籍の出版などを通して、理論を研ぎ続けている。

CULTIBASE/
組織ファシリテーションの知を語り継ぐWebメディア、技の探究を深めるオンラインプログラムを運営している。イノベーション、マネジメント、デザイン、学習など、組織の創造性に関わる最新の理論と実践知を提供している。

問いのデザインとは…

 安斎さんによると、ちょっとしたきっかけにより眠っていたポテンシャルが引き出されるワークショップに注目し、そして、ワークショップのプログラムデザインに注目してきたとのことである。

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 ↑                     ↑
                      ポテンシャル
                       ↓
 本当はここまでできる           ーーー
 本当はこんなことがしたい          ↑
                      現在の環境で発揮される
                      パフォーマンスや意欲
 ↓                     ↓
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 安斎さんによると、ワークショップを研究し、その本質は、ファシリテーションではなく、ワークショップデザインにおける課題設定、つまり、参加者に投げかける「問い」である、という考えに至ったのである。
 そして、この「問い」において、既存の枠組みや日常から解き放たれることが大切である、とのことである。人は、物事を客観的に見られておらず、見たいものを意識しているが見ているものを意識していない。我々の視野は驚くべきほど狭いのである。そのため、創造性を引き出す鍵として「問い」があり、より良い「問い」に辿り着くためには、「遊び」が必要であり、「遊び」により内発的動機を呼び起こすのである。
 「遊び」も交えた「問い」によるワークショプにて、組織のポテンシャルを引き出し、組織変革やイノベーションを引き起こすことができるのである。ワークショップデザイン以前に「問いのデザイン」がすでに始まっている、とのことである。

授業にて特に印象深いことは...

 特に印象深かったのは、「問い」に対して、「遊び」を加えるという考え方であった。「問い」については、ビジネスの現場において、特に第三者として現場に関与するコンサル業界では常に求められるものであり、特段、目新しさは感じないものであった。例えば、『イシューからはじめよ』など、「問い」に関する様々な書籍が出ている。

 一方で、「問い」と「遊び」を掛け合わせて組織の創造性を引き出す、という考えは面白いなあと思った。授業では、より良い問いを生み出すための鍛え方として、バラエティー番組について言及していた。例えば、大喜利にて競い合う『IPPONグランプリ』において、問題を類型化し、それをワークショップでの「問い」に活かしている、とのことである。

 本授業の別回にて、「ちゃんとするを排除する」ということを合理的に、真面目に考えて、判断し、実装することが大切、というコメントがあり、人間の創造性において、遊びの観点が重要であると改めて学んだ。私も、視野が狭くならないよう、既存の枠組みや日常から解き放ち、「遊び」の目線も忘れないようにしたいと思う。

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