見出し画像

関節可動域制限のために理解しておきたい皮膚の構造と機能

皮膚は人体の表層にあり身近な組織です。

リハビリにおいても直接アプローチする部位ですが、意外と見落とされがちな部位です。

皮膚は筋肉などと同じく関節可動域制限の要因となります。

今回は、身近であるけれど見落とされがちな皮膚の構造と機能について紹介します。

それでは、本日も学習していきましょう!




皮膚は外界から生体を守っている人体最大の組織です。

皮膚は収縮機能をもたないため関節運動の発生には直接関与しません。しかし、皮膚は高い伸張性が要求されるため異常が発生すると関節運動の妨げになりえます。

ギプス固定などの長期固定では、皮膚の組織学的変化が強皮症に類似している可能性が示唆されています。

皮膚の基本構造

皮膚は厚さ1.5〜4mmの層状の構造を持ちます。

表層から上皮組織である表皮、結合組織と皮膚付属器からなる真皮、主に脂肪組織で占められる皮下組織の3つに区分されます。

表皮

表皮は主にケラチノサイト(角化組織)です。深部から基底層、有棘層、顆粒層、角質層の4層をなしています。

基底層のケラチノサイトは機能と形態を変えながら有棘層、顆粒層、角質層へと表層に向かい(ターンオーバー)最終的には皮膚表面から剥がれていきます。表皮を構成するケラチノサイトは約1ヶ月で全て入れ替わります。

また、表皮内には免疫機能を果たすランゲルハンス細胞や、触覚を司るメルケル細胞、メラニン色素を合成するメラノサイトが存在します。

真皮

真皮は密な線維性結合組織からなり、関節運動に対する柔軟な追随と皮膚の内部構造と密着する力学的役割を担っています。

真皮の線維性結合組織の間質を構成するのはコラーゲン線維、エラスチン線維、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などであり、これらは筋膜、靭帯、関節包と構成成分が類似しています。

真皮にはコラーゲンやエラスチン線維を産生する線維芽組織や免疫機能に重要な肥満細胞、マクロファージが豊富であり、毛細血管と末梢神経線維が網状に分布しています。

また、毛根、汗腺、皮脂腺が位置するのは真皮の深層です。

表皮と真皮の間には表皮基底膜というコラーゲン線維、ラミニン、プロテオグリカンからなる緻密帯が存在し、これが表皮と真皮を強く結合しています。表皮基底膜は外界からの力学的なストレスに耐えるだけの強度を皮膚に与える構造をもちます。


皮下組織(皮下脂肪)

真皮のさらに深層には脂肪細胞が多く分布する疎性結合組織の層があり皮下組織もしくは皮下脂肪とよびます。

脂肪細胞は細胞内に中性脂肪を脂肪滴として蓄え、核や細胞小器官は辺縁に圧迫されています。また、脂肪組織は分裂機能をもち、脂肪滴の量に準じて肥大化します。


皮膚の血管

皮膚の血管は、真皮浅層、真皮深層、皮下組織深層において皮膚面と平行に二次元の血管網を展開しています。それぞれが垂直に走る血管により連結しています。

この網状かつ層状の構造は、広い範囲に血液を効率よく循環させます。また圧迫や歪みによる血流の遮断が起きにくいため関節運動による変形や負荷に対応できます。

皮膚の感覚神経

皮膚には感覚神経と自律神経が密に分布しています。

感覚神経のうち太い有髄神経の先端には触刺激および圧刺激を感知するマイスナー小体、パチニ小体、ルフィニ小体という感覚受容器があり真皮に分布します。

有髄神経の一部は表皮のメルケル細胞に接続し圧刺激を、一部は毛根に巻き付き毛包受容器で触刺激を感知します。

細い有髄神経と無髄神経の先端は自由神経終末となっており、侵害刺激、熱刺激、冷刺激を感知します。また、一部の無髄神経は表皮基底膜で、かゆみの発生と感知に関与しています。

自律神経は表皮にある汗腺、皮脂腺といった皮膚付属器および血管などに接続しています。


皮膚の機能

バリア機能

皮膚の最も重要な機能は、外部刺激や環境変化から内部組織を防御し、恒常性を保つことです。バリア機能は角質層が担い外部刺激を受け止め、最近や抗原の侵入を防ぎます。

また、内部の水分が蒸発するのを防ぎ機能を持ちます。汗腺から分泌される水分と乳酸、皮脂腺から分泌される中性脂肪と脂肪酸が混ざり天然のローションとなり、皮膚の保湿機能と抗菌作用をもたらします。

感覚機能

ケラチノサイトの表面にはTRPV1受容体とP2X₃受容体が存在しています。

TRPV1受容体はトウガラシの辛味成分であるカプサイシンや熱、酸といった刺激を受容します。

P2X₃受容体は化学的・物理的刺激により細胞から放出されたアデノシン三リン酸を受容します。いずれも自由神経終末に存在する受容器と同じものです。

刺激を感知したケラチノサイトは種々のサイトカインを放出し、表皮内、表皮下に分布する感覚神経と相互作用していると考えられています。外部からの刺激を最初に感知するのは感覚神経よりもケラチノサイトであるという可能性も示唆されています。

その他の機能

汗腺からの発汗により体温を調整する機能や、毛包脂腺を通じた薬などの経皮吸収作用、骨のカルシウム分を増加させるビタミンDを紫外線によって活性化する場を提供しています。

また、皮下組織は外力に対する緩衝作用、保温作用を有し、さらに脂肪貯蔵によるエネルギー代謝も担っています。


今回の記事は以上になります。


参考にした書籍はこちらです↓
関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


面白かった、共感できたなどありましたら、ぜひスキボタン、 フォローボタンをポチっとお願いいたします!

X(旧Twitter)で情報発信しています。理学療法士HASEに興味を持っていただけた方、応援していただける方はフォロー、いいねをお願いいたします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?