『イロカワ文学賞 第一回』感想
イロカワ文学賞
「イロカワ文学賞」という文学賞があります。
主宰・にゃんしー様
現在は第三回の選考中です。
私は第二回と第三回に参加させていただきました。
他の文学賞と違うのは、参加者が他の参加作品を選考するというシステムを設けてくれていること。
書いて応募して終わり。ではなく、同じ賞に応募されている他の作品を読み「選ぶ」という過程までがついています。私としては、この「選ぶ」=「評をつける」ことがこの賞の醍醐味だと感じています。
選評のやり方は、おもしろかった作品を何作でも選んで、よかった点を中心にコメントを書くというルールになっています。
これはすごくありがたいなあと思います。
ちまたの文学賞の大半は、最終候補作(あるいは予選通過作)以外は評をもらえなかったり、審査員評も褒め言葉と同じくらい辛辣な言葉が並んでいたりして、もちろんそれだけ厳しいからこそ創作執筆にたいして日々修練を積んだり仲間と切磋琢磨したりするモチベーションにはつながるけど、
同時に、なんで落選したのかわからんとむなしくなったり、選考基準がよくわからんなあと首をひねったりと暗中模索した結果、モチベーションが下がり、なかには筆を折るケースもあるかもしれません。
でも、たとえ一次予選を通過しない結果が続いても(確率的に応募者の大半がそうだと思うし、私自身もそうです)、「やっぱり書きたいな」と感じる気持ちは大事にしたいです。誰かに認められたいから書くというよりは、もっと原始的で生理的な欲求として、のどが乾いたから水を飲みたいのと同じレベルで、しばらく小説を書いていないと精神的に荒んでくるし、書くと潤う感じがします。書きたいから書く、というのが私の感覚です。
イロカワ文学賞は、そういう「書きたい」欲求をやさしく汲みとってくれる賞だ思います。選考がはじまって、おもしろいと思った作品に出会うと「こんなふうに書いてみたい」とか「こんな書き方は私には真似できない」とか刺激を受けたり、「私はまだまだ応募作品に対してやれることがあったのでは」と反省したり、……といった時間が純粋に楽しいです。なんというか、応募する時よりも選評したあとのほうが、創作意欲が高まっています(笑)
逆に、あえて選ばない作品というのもあります。この作品を書きたい気持ちはすごく伝わってくるし、上手いなと思うところもあるけど、もう一歩先が読みたいなと思う作品です。なんだろう、読者の期待を良い意味で裏切ってほしかったな、的な感じとでもいうのか。……っていま、自分で書いておきながら、これは自分に対する戒めだなとブーメランが返ってきました(笑)きっと私の作品を読んでくださって選ばなかった方達の想いには、「もうちょっと先のおもしろさをくれ~」というのがあったのかも?? 想像にすぎないけど、そんなふうに考えられるのも「選ぶ」からなんですよね。
他の文学賞だと、結果発表を見る時に自分の作品がそこにあるかをドキドキしながら探すのですが、イロカワ文学賞に関しては自分の順位はわりとどうでもよく、むしろ自分が選んだ作品に他の人がどんなコメントを寄せているか、のほうが気になります。いや、別に応募作に手を抜いているというわけではなくて……(いや応募時はがんばって推敲するけど、他作品を読むと反省点が見つかるので、「あ、ちょっと手を抜いてたかも」感は毎度あります、、、)
『第一回イロカワ文学賞』感想
第一回には私は参加していなかったのですが、らくだ舎さんのこのページを読んで購入を決めました↓
『小説を読むこと自体を楽しいと感じ』た、とのくだりで親近感が湧いて、
本を創ってくれているにゃんしーさん、
その本を取り扱ってくれているらくだ舎さん、
そのつながりのおかげでイロカワ文学賞第二回以降に参加できたのだなぁ。
としみじみ感じ入り、購入ボタンを押しました。
あたたかいお手紙付きで発送してくださいました。らくだ舎さん、ありがとうございました!
いつか色川に行ってみて、色川が舞台の小説も書いてみたいなあ、
なんてちょっと思ったりして。
さて、
『イロカワ文学賞 第一回』
本の構成が良いです。
選評がまずあって、次のページから作品本文がはじまるので、読む前に感じたイメージと、読んだ後に自分が抱いた感想との共通点や相違点が出てきて、一作品ごとにいろいろと考えさせられます。
「はじめに」に寄せられたにゃんしーさんのイロカワ文学賞に対する想いにも感動させられます。小説に対してこんなにも真摯に考えてくれている人がいてくださること自体がありがたいです。
第一回に参加していない私が評を書くのもどうかな、と思ったのですが、
もし参加していたら個人的に評を書きたいと思った作品は確かにあり、
この場を借りて短い感想をお伝えしようと思います。※ネタバレなし
(掲載順)
※作者様名は略させていただきました
・「ρの宿泊」・・・日常の中に彷徨いこんできた非日常、という感じで、甘えを帯びたすこし痛々しい雰囲気が好きです。
・「走れアタシ」・・・ギャグ小説として大いに笑わせてもらいました。幾捻りもある展開がさらにおもしろかったです。
・「後神武帝本紀一」・・・理解は追いつかないけれど、おもしろいことが起きている物語だというのはよくわかりました。映像化してほしい(笑)
・「ニコラスケイジ」・・・はっとさせられました。ふだん平和に暮らしている私たちに突きつけられたような。14作品の中で最も印象に残りました。
・「手紙は灰に灰は薔薇に」・・・映画を観ているかのような異国情緒あふれる世界観に浸りました。スト―リーもしっかりまとまっていて、読みごたえがありました。
・「めまぐるしいめまい」・・・表現するのが難しい感情を、きちんと描写してくれている作品だと思いました。こういう関係を書けるのはすごいと思いました。
・「モノローグ桃太郎」・・・中毒性のあるおもしろさです。おもしろすぎて読み終わった直後に再読しました。バズりそうなおもしろさがあります。正直、今回の14作品の中で最も推したい作品です。
・「海の見える駅」・・・ただただ、上手いなあと感じ入る作品でした。文章といい構成といいストーリー展開といい完成度の高さを感じました。
私は第二回に参加したので、作者様のお名前を見て、
「こんな感じの作品も書きはるんやなあ」と発見できたのも楽しかったです。
また第二回、第三回と書籍ができあがったら、ぜひ購入したいと思います!
※イロカワ文学賞第二回 に応募した小説をnoteに載せました。選評をくださった方、選ばなかったけれど読んでくださった方、
すべての方に感謝しております。
※にゃんしーさんの小説『夏映え』
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