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【わたしの婚活日記Vol.2】惜しかった現実創造

「babyって呼んでいい?」
冷静に考えれば、こんなセリフ自体がロマンス詐欺の象徴だよね。


アラフォーというにはギリギリの44歳のわたしは先月マッチングアプリを始めて3日ほどで3人とマッチングしてメッセージのやりとりをスタートした。
その中で笑顔がかわいい7歳年下のKさんと仲良くなって、アプリ内でLINEの交換をした。
マッチングアプリをするのが初めてのわたしは、この世界で気をつけることをよくわかっていなかったけど、LINEの交換は実際に会ってみて、人柄を見てから交換しようと自分の中でルールを決めていたのに、彼の要所要所が好みだったこともあってついガードを緩めてしまったのだ。
「仕事が忙しくて、こまめにアプリをチェックできないからLINEでやりとりしましょう。」
そう言われて、一瞬考えたがわたしはあっさりLINEの交換をしてしまった。

それからの約2週間、朝から寝るまでまめにやりとりをするようになった。
海外生活が長かったということもあり、コミュニケーションの取り方が海外の方の感覚で、愛情表現がストレートなのが新鮮で、心を開いて素直にコミュニケーションをとれることが楽しくてときめいていた。

が、しかし、初めから異変はあったのだ。
LINEを交換して間もなく、アプリの彼のアイコンが強制退会扱いの表示で閉じられていた。理由を聞いたら、
「メッセージのやりとりをしていた女性が不倫目的だったことがわかって問い詰めたことで、相手がアプリ会社にクレームを申請したのかもしれない。」
とのこと。
ん?と思ったが、ひとまず様子を見ることにした。

その後も極端な個人情報には触れない程度に仲良くなっていき、デートの約束をした。長期の出張中だから1ヶ月後出張から戻ったら、○日に会おうと。
この時のデートプランも詳細に考えてくれて、
「クリスマスも近いから、好きなものをプレゼントするよ。」
なんてことも話していた。

が、しかし、ついに危険信号が点滅した。
「きっと僕たちはこのまま将来を見据えて付き合うことになるだろうから、二人の将来のために僕が副業で運営しているネットショップを紹介したいんだ。僕がしっかり教えてあげるからbabyも少しの時間で稼ぐことができるよ。」
まだ会ってもいない、写真と電話とLINEのやりとりの人からこんなことを切り出されたら、久々のときめきで浮かれポンチのわたしもはっきりと目が覚めた。
そしてわたしは静かに彼のLINEをブロックし、現実の世界へと戻ってきた。


このKさん、半年ほど前に自分で書いた『わたしのパートナーリスト』なるものの項目を見事にほぼほぼクリアした人物で、ついにわたしも現実創造ができるようになったのか!!なんて浮き足だってしまった。
Kさんは、多分この世界に実在しない人物なんだと思う。写真だって、いくらでも他人のものを使えるし、出張中の現場の写真だってうまいことやればリアルタイムを装うこともできる。
母親との2ショットを送ってくれた時はかなり信じ込んでしまったけど、笑。
その他もろもろ、なかなか巧妙で、単純なわたしは半信半疑な気持ちを持ちつつ、まんまと虚像の世界に引き込まれた。
お金を騙し取られることもなく、今のところ危険な目には合っていないからセーフだ。事件に巻き込まれなくて本当によかった。

婚活に勤しむ恋愛ブランクのある40を過ぎた女なんて、甘い言葉に弱いに決まってるじゃないか。そこに漬け込んで、なんて卑劣な奴らなんだ!悔しい!
そう思うことはいくらだってできる。
まさかこの自分がロマンス詐欺的な状況に陥るなんて想像もしていなかったし、束の間の甘い時間がなくなってしまってどこか寂しい気持ちもあった。
しばらく冷静に振り返ってみて出た答えは、『被害者に成り下がるのはやめよう』だった。
強がりでもなんでもなく、わたしはただ騙されたんじゃない、自分で騙されることを選んだんだよ。
そこにメリットがあったから。甘くて優しい男性の言葉に癒されてときめいてわくわくしたのは事実で、楽しかったじゃないか。
虚像の世界ではあったけど、楽しいひとときを過ごさせてもらった。
最初から、『あれ?』と思いながらも、駒を進めたのは自分だ。
だから、被害者ぶって相手を悪者にして嫌な気分を持続させるのをわたしはやめた。


浮かれポンチの時期、わたしは実家に帰った際に母にKさんの写真も見せたし、色々報告していたので、ことの結末を正直に話した。
「あんたが舞い上がって楽しそうだったから言わなかったけど、そんな調子のいい話あるわけないと思ってたわよ。それに写真を見たとき、この男、まぬけ面だなって思ったのよね。」
さすが、人生の先輩、母強し、だ。


わたしは描いていた未来のパートナーを、嘘の世界ではあったけど創造できたんだよな。。。実に惜しかった。あともうちょっとだった。。。
Kさんと付き合う気満々だったときにアプリを退会したもんだから、また新しく写真を撮り直して翌週アプリを再開した。

仕上がったプロフィールを見直して見ると、そこにはとびきり笑顔の44歳のわたしがいる。
うん、悪くない。
愚者は、また旅を始めた。



晴海 たお

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