『ONE PIECE FILM STRONG WORLD EPISODE:0』感想 "金獅子のシキ"の味わい深い魅力
◆第0話"STRONG WORLD"
『ONE PIECE FILM STRONG WORLD EPISODE:0』が2023年10月13日20時より期間限定で公開されている。
2024年1月14日(日)23:59まで公開なので、もし貴方がたった今これを知ったのなら早速見ておくといいだろう。19分とテレビアニメシリーズ従来とほぼ同じ尺だ。まあ、何度も見返せる要素・見所さんが多い作品なので、一回見れば十分かどうかは各々判断に任せる。
2009年12月に公開された『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』の前日譚にあたる作品であり、ワンピ史における第0話となっている。原作では第0話"STRONG WORLD"というサブタイトルになっている。初出はジャンプ2009年53号であり、劇場当時配布された0巻(巻零)に収録された。
公開当時の原作はインペルダウン編となっており、それがクッソ面白くて(過去の敵キャラと一時PTinするワクワク感、ハードなダンジョン攻略形式、エース救出という最大目的)、ぼくは当時大分脂が乗っていた原作の勢いに沿って行くように当時劇場へ足を運んで行った記憶がある。あれからもう14年前なのがやれ恐ろしい。
当時は第一次?ワンピース旋風を巻き起こしたことでも知られているが、ワンピを知らない人でも連載10年以上経過している本作がどんな作品なのかを明確に伝える王道型の媒体として納得している。
最近アンコール上映された『RED』は第二次?ワンピース旋風であるが、そちらも似たような感じだ。ワンピに詳しくなくても展開についてこれるし、音楽と映像の力が強いからな。『RED』はワンピ映画で一番大好きです!
0巻は当時はあまりの人気に数日で配布終了したり(ぼくは公開3日目にゲッツできた)、台詞や絵の違いによって5種類存在している都市伝説めいた仕様が話題沸騰となった。レアverが当時高価買取されていたのも今となっては懐かしい話だ。
因みにこの第0話は2012年に刊行されたファンブック『DEEP BLUE』にも収録されている。
残念ながら電子版は存在していない。
ただ、最近『HUNTER×HUNTER』の0巻(クラピカ追憶編)が電子化されてお手軽に読めるようになったので、本作もそれが実現化される日を待つとしよう。
◆STRONG WORLD EPISODE:0
今回紹介するのはその第0話をアニメ化したものだ。
間違えられやすいので念のために記載するが、『連動特別篇 金獅子の野望』とは別である。そちらはテレビアニメシリーズに話数カウントされている。本作はどちらかというとワンピには珍しくOVAの形式に近い。
抽選で3,000名にプレゼントのOVA。そりゃあレアモンすぎんだろ。
マジのガチで非売品だ。『STRONG WORLD』本編の円盤には収録されていないし、別途商品化もされていない。ゲッツできた方は一生モンのお宝になるのは間違いない。
これ当時欲しかったんだよなあ。まあ原作で十分満足だったのだが、やはり映像化するとどうなるのかと地味に気になっていた。それが14年の時を経て、期間限定だがYouTubeで配信。良い新時代になったものだ。
ぼくはあまりワンピに詳しくないのだが、0話はめちゃくちゃ面白かった記憶があるので、改めて白紙に近い状態で視聴してみたくなった。今でも手元に0巻があるが、是非このアニメで再確認しようと良い機になった。
◆感想
●"金獅子のシキ"の魅力
0話のシキさんはやっぱりかっこよくて良いキャラしてやがるぜ…!
原作同様、すごい濃厚な19分だった。
なんといっても、この0話だけでシキさんの魅力が詰まっている。この人を本編軸で出さないのが勿体ないくらいに。
第一にぼくが触れたいのは、シキさんがロジャーのガチファンすぎるのが最高だった。おっさんだけど、同じ海賊にしてライバル関係のようになっている。ロジャーが逮捕されたときはガチで信じられないくらいショックを受けていたのが好きすぎるし、なんならもうマリンフォードへ殴り込みしにやってきたというストロングスタイルもはっちゃけすぎて大好きだ。その後インペルダウンにブチ込まれたとはいえ。
ぼくはただでさえ「ライバルを認め、リスペクトする」の精神が大好きなので、もれなくシキさんも大好きなキャラとなった。ロジャーは大海賊だけあって大海賊時代の幕上げと共に多くのフォロワーを産み出し愛される存在となったわけだが、ライバルのような距離感が近いシキにも愛されているというのが最高にツボなんだ。
『STRONG WORLD』本編では明かされなかった「何故頭部に舵輪が付いているのか」「何故両足は刀剣なのか」という疑問が回収されている。
頭部の舵輪はシキさんには欠かせないというか、これがないと違和感を禁じ得ないので特に「変なファッションだなあ」とは思わなかった。しっくりデザインだった。尾田先生のキャラデ力の高さを再確認させられる。…まあ、よく見ると変ではあるのだが。
だがしかし、ロジャーとの激戦を繰り広げた後の名残だと明かされれば深い意味を持つようになった。これを取り外すと死に至るのもあるが、ロジャーと対等に渡り合えた証として欠かせない、感慨深いアイテムとなった。
両足の刀剣はインペルダウンから脱獄する際に自ら両足チョンパし、義足代わりに取り付けたというトンデモエピソードが明かされる。言い換えれば、両足チョンパせざるを得ないくらいインペルダウンがハードなダンジョンに変わりがないのを証明させている。ここは素直に巧い、シビアなバランスの取り方だ。シキさんのスゴ味を増しててWin-Winの関係に仕立てているのも素敵だ。公開当時はインペルダウン編だったのも本編リンクとしてニヤリとさせられる。勿論ハンニャバルさんも登場する。
そんなわけで0話のシキさんが最高すぎただけに、『STRONG WORLD』本編では分かりやすい悪役に成り下がってしまったのは当時残念がっていた。いや別にあれはあれでいいのだ。ワンピを詳しくない人にも入り込みやすい、勧善懲悪なストーリーの為に用意された敵の姿としては正しい。第一、おっさん同士のライバル関係というのはあまりマス受けしづらいだろう。次回作『Z』はおっさん全振りアニメだったが。
しかし、0話でのシキさんの味わい深いキャラが失われてしまったため、本当に同一人物なのかと疑わしくなってしまった。大変複雑なお気持ち表明。
●大海賊時代の到来を味わえるマジ感
本編から20年前、大海賊時代から3年前のお話。主にシキさんの視点で描かれている。
0話のもうひとつの見どころが、その20年前当時のワンピ世界。
連載10年以上経過したからこそ、多くのネームドを輩出させた分、大海賊時代到来の衝撃をみんなと共に味わえるのが醍醐味だ。当時はこんなリアクションだったんだなあ…と、前日譚だからこそようやっと描けたのはファン垂涎モノだ。
ワンピ本編でも世界情勢回では各国の反応が見られて、それも世界が変革されていくマジ感がぼくは好きなのだが、0話も大体そんな感じ。
ロジャー処刑と共に幕を上げた大海賊時代は多くの者に興奮を与えた。その上で大海賊時代が全肯定されたわけではないのも興味深い。シキはロジャーの死に悔やんでいるし、デュバルさんのブサメンには大海賊時代は呪いだとか散々なことを言われている。
しかし今見直してみると、ロジャーが処刑された地であるイーストブルーが最弱の海とはとんだ皮肉めいた案件だったんだなあ。そりゃあ屈辱だ。だがしかし、そんな最弱の海にて大海賊時代を宣言したロジャーの一転攻勢は痛快だ。海賊王の説得力が増してしまった。
クザンさんがガーブおじいちゃんにデレデレだったのは、最近の展開を知ってしまった者からするとものすごく複雑な気分にさせられた。このふたりの関係が好きすぎるだけに、微笑ましいのではなくすごぶる切なかったなあ。もう戻れないんだなあって。
あとロリハンコックさまマジかわいい。セラフィムハンコックもかわいいが、オリジナルも甲乙付けづらいくらいかわいい。声が良い。
●アニメ媒体として
『STRONG WORLD』本編と同じくらいのテンポ。早すぎず遅すぎず、丁度良い。
アニメ版ワンピはあまりのクソダルテンポなことに定評がある(ワノ国編からは作画に力を入れてくれるようになったが)ので、この0話も果たして大丈夫なんだろうか…と気になっていたのだが、全然杞憂な心配だった。恐らく『STRONG WORLD』本編と並行して制作されたのだろう。
お話自体は原作と変わらない感じ。映像面もそこまですごいわけではないのだが、見るとトクするの領域には余裕で到達しているのでぼくは強くオススメしたい。せっかく『STRONG WORLD』本編がアニメ媒体なんだから、0話もアニメで揃えておきたい。
因みに物語は『STRONG WORLD』本編終盤、ルフィVSシキからスタートしている。もう完全に本編視聴を前提としたつくりだ。劇場公開後にDVDが発送されただろうし。原作版0話は公開前に発表されたものだが。もっと言うなら、この導入はシキさんの走馬灯のように見える。いや生死不明なんだけども。