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「200字の書評」(296) 2021.6.10



こんにちは。

日差しの強さに初夏を感じます。梅雨入りはまだ、雨の良く似合う紫陽花が梅雨はまだかな、と揺れています。本を斜め読みしていたら、子規の句がありました。

紫陽花や きのうの誠 けふの噓

正岡子規

紫陽花の色が変わりやすいことに引っ掛けた、子規らしいチクリと来る一句です。

さて、今回の書評は城ブームの立役者、城郭マニアの必読書です。




千田嘉博「城郭考古学の冒険」幻冬舎新書 2021年

勇壮な石垣と天守・瓦葺きの館を備えた織豊系城郭だけでなく、それ以前の土の城も重要であると説く。城からは地形風土歴史、大名と家臣の関係などを読み取れる。著者はアイヌの城や海外の城にも探求の目を向け、文化人類学的な研究姿勢を貫き、用語や常識にも疑問を投げかけ、調査不十分で観光的な復元城郭を鋭く批判する。城郭考古学とは史学、考古学、経済学、土木建築工学を含む総合的な学問であると知る。城ファン必読の一書。




【水無月雑感】


▼ 天邪鬼の私が、とある事情でワクチンを接種せざるを得なくなりました。かかりつけ医の電話はつながらず、市の大規模接種会場では順番が8月になるとか。ダメもとで、近所のクリニックに確かめたら、なんと二つ返事で接種可能でした。バラつきがあるのですね。報道によると、ホームレスなどには接種の支援が届かぬ、とのこと。あまねく普及しなくては意味が半減です。なんとか優しい対応が取れないものか。




<今週の本棚>


半藤一利「歴史探偵 忘れ残りの記」文春新書 2021年

言わずと知れた昭和史の泰斗は、小さな生活の中に歴史が積み上げられていることを教えてくれる。昭和が遠ざかることに寂しさを感じる。


武田砂鉄「わかりやすさの罪」朝日新聞出版 2020年

わからないことは分からない。分かったふりは軽薄で危険だ。分からないから悩み考える、思考の過程や惑いを軽視し、結論を急ぐ風潮に異議を唱える。こうした正論が忘れられ、軽んじられる今がわかりやすい。




一気に真夏です。健康にご注意。  


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