駄菓子屋ノスタルジー
お小遣いを握り締めて駄菓子屋に走る。小学校低学年の頃から卒業するまで頻繁に通った。高学年になるにつれお小遣いも増え、お菓子の選択の幅が増えるのだが、低学年の頃のお小遣い30円でも5円、10円のお菓子も多く、選ぶ楽しみがあった。
駄菓子。駄菓子屋。ノスタルジックな響きがあるが、当時そんな言葉を使ってたかどうか。店主の名前をつけた〇〇商店、〇〇行こうって言ってた記憶がある。
今の洗練された駄菓子屋と違い、お世辞にも衛生的と言える店ではなかった。天井からハエ取り紙がぶら下がり、お菓子はむき出しとまでは言わないが、湿気や埃対策が不十分なまま並んでたり、誰でも海苔の瓶のような容器に手を入れて取ったりしていたはず。遊びのついでに寄るのだから、手を洗っていた子供がどれほどいただろう。いや店番のおじいさん自身、手を洗っていたかどうか。それでもたくさん並ぶお菓子が放つ魅力。宝物を前にしたような気分だった。
左上は黒棒と言ってた。今でもあるけど、当時の駄菓子屋の味とは違う。コッペパンを買っても、なかなか給食の思い出の味に巡り会えないのと似ているかもしれない。10円でクジを引く。外れると写真の細長いものが一本もらえ、当たると大きな丸いやつがもらえた。憧れたなぁ。
左下のモロッコヨーグル。これは、おおっ! って方が多いのでは? 美味しいかと言われると微妙、でもよく買ってた。常温で売ってることが大人になってからも謎だったが、ヨーグルト風なだけでヨーグルトではないからだと、この記事を書くために調べて初めて知った。長く食べてないけど、口に入れた時のざらっとした感触は忘れない。
右はサイズや味のバリエーションも増えたけど、当時はこれだけだったように思う。懸賞に応募してクマの絵のついた腕時計が当たった嬉しい記憶がある。ベビースター感覚でチキンラーメンをかじった経験のある人も多いのではないだろうか。味が濃くて別物だと思いませんでした?
他には10円で小さな粒が4つ入ってるフーセンガムやコーラ飴、いかにも体に悪そうな粉末ジュースやチロルチョコなどが僕の定番おやつ。チロルは今のような小さいのではなく、三つくっつけたような形で20円だったと思う。かっぱえびせんやサッポロポテト、カールなどが発売された時期と僕の小学時代は重なるけど、これらは大袋で駄菓子屋のお菓子というより家で買ってもらうお菓子だった。
いらすとやさんのヘッダーに飲料の販売機があるけど、当時は缶ではなく瓶。扉を開いて一本取り、販売機付属の栓抜きに突っ込んで、ガコッって感じで抜く。低学年の頃は買ってなかったなぁ。お小遣いを何日か貯めないといけないし、栓を抜くのが難しいという理由もあった。さっそうと栓を抜く高学年はかっこよかった。できるようになると簡単だけど、炭酸なので開けた瞬間に溢れ出し、気前よくこぼす奴もいたりした。
ファンタは今でもあるけど、セブンアップはどうなんだろう? スコールはちょっと高いので、飲んでる奴は羨望の眼差しで見られていたような。
栓は王冠といって裏にクジがついていることもあった。それを販売機にぶら下げてあるキリのようなピンで開ける。王冠自体をコレクションする人もいたようで、まんが『ちびまる子ちゃん』で戸棚から大量の王冠が出てくるシーンがあったはず。さくらももこ先生は学年が二つ上なので、あのまんがは記憶と被ることが多々ある。印刷がズレた王冠は希少価値があると聞いたことがあるが、どうなのだろう?
僕が通っていた駄菓子屋がなくなって久しい。店があった通りも姿を変えてしまい、当時の面影を偲ぶことは難しい。
駄菓子や駄菓子屋自体は今も各地にあり、昭和を模した佇まいに郷愁を感じることもあるけど、僕の記憶の中の駄菓子屋は現役の店であり、何を買おうかとお金を握り締めていたわくわく感が、少しノスタルジックな思いとともに浮かんでくる場所だ。