WWOOFで学ぶ農業と英語
「WWOOF」という農家と人をつなぐマッチングサービスについて、友人からの薦められすぐに登録した2022年夏。
農業に興味を持つようになったのは、沖縄で陶芸家の方の家に招かれたときのこと。「あなたはどんな人なのか」と聞かれ、学歴と職歴以外で自分を語れない自分に気づき、無力感に襲われました。その場にいた先人たちの生活は植物を育て魚を採り、自然とともに生活している。「自分も生きる力を身に着けたい」という思いが芽生、それ以来、農業を学びたいと考えるようになったのです。
WWOOFは世界中で利用できるサービスで、日本では「WWOOFジャパン」で年間5000円ほどの登録料で利用できます。
ホストは滞在場所と食事を提供し、ゲスト(WOOFER)は1日6時間の仕事を行います(1週間に1日の休みあり)。お互いに尊重しながら共同生活を送ることが根本にあります。
私は米農家、狩猟で生計を立てている家、茶畑、リンゴ農家など6か所のホストで経験を積み、そのうちの1か所には定期的に通うようになりました。ホストによって滞在期間や休み、提供される食事や設備は異なります。
オフィスワーク歴10年以上の私にとっては農作業で使う体の動かし方がまったく違い、最初の頃は1時間の作業でも大変でした。
50代から農家を始めたホストからの「体力は年齢とともに衰えると言うが、それは身体を使っていないだけ。自分は、脱サラしてからどんどん体力がついていっている」という言葉は確かで、6時間の作業が当たり前になっていきました。日中の健康的な暮らしで、夜はぐっすり眠ることができました。
農家での1日は朝5時頃から始まり、暑くなる前に作業を進めます。主な作業は雑草取りや草刈り、土づくりで、「種まき」や「収穫」といったイメージ通りの作業時間は意外と少ないのです。それでも、土の香りに包まれて日差しを浴びながら体を動かすのは気持ちよく、リフレッシュできます。
雨の日には、お茶や果物の加工や梱包作業などもあり、メリハリをつけて作業することができました。
農作業の合間にホストの方が出してくれる美味しいご飯、あるいはみんなで作る夜ご飯が楽しみでした。狩猟の現場では新鮮な鹿のハツを食べたり、ブルーベリーは食べながら収穫することもできました。ホストごとに特色があり、それぞれの生活や考え方を学ぶ機会も多く、心身ともに充実感を味わうことができました。
そして、予想外の副産物が「英語」でした。
WWOOFは日本以外の国ではよく知られており、日本の生活を体験しようと多くの外国人も訪れます。私が会ったWWOOFERは、台湾、韓国、シンガポール、アメリカ、ドイツ、フランス、ベルギー、イスラエルなどから来ており、年齢も18歳から50代と幅広く、特に20代の学生が多かったです。
生活の中では想定外のなるほど質問が飛び交います。「布団の敷き方」や「お風呂の使い方」といった質問を受けるたびに、新しい英単語がインプット&アウトプットされる。話題も趣味から仕事、海外の文化と幅広いです。フランス人の友人とは映画の話で盛り上がったのですが、表面的なことしか話せないもどかしさも感じました。一方で、コミュニケーションを通して言語の正確さに関係なく友達が作れることも知りました。これにより、まずは「英語学習」や「英語でのコミュニケーション」のハードルが下がり、次に「もっと話したい」という意欲が英語学習へのモチベーションになりました。
今はそのときの友人を訪ね、海外旅行中にその家に滞在させてもらい、友人やその家族との生活を楽しんでいます。「WWOOF」は農業体験はもちろんのこと、英語での交流を通じて友人や異文化を知り、学びが得られる貴重な体験です。私はこの活動を通じて地域の交流にも参加し、第二の故郷と感じられる場所ができ、そして多くの世界中の友人ができました。英会話学習にもつながり、海外旅行の楽しみも広がりました。
オンライン英会話やミートアップもありますが、「WWOOF」を通して国内で新しい英語学習の方法として、もっと広がってほしいと思います。