知らないあの子
友人が髪を伸ばし始めた。ずっとショートヘアにしていたあの子の髪が私より長くなる日が来るとは思わず、妙な気持ちだ。変わらない人間なんていないのに、少し外見が変わっただけで自分の知らない人になってしまったような気がする。本当に身勝手な生き物だとわかってはいるのだけれど。彼女が髪を伸ばし始めた理由をひとりで様々に考える。今の恋人の影響か、数ヶ月前に始めたスポーツのためか、私は何も知らない。知っているようで、実は何も知らない。寂しさとは違う、複雑な気持ち。彼女の本質が変わったわけではないのだけれど、少しずつ自分の存在を確かにしていく彼女への焦りか、嫉妬か。風を感じる首元を一撫する。私は何か、変わっただろうか。確かな自分を、得ただろうか。
正反対なあなたと私。いつまでも交わることなく、あなたはあなたで、私は私。どうもありがとう、私を強くしてくれて。ひとりでも立てるようになったわ。あなたのおかげで。本当に、ありがとう。これからも変わり続けて頂戴な。私が強くなった意味が消えないように。いつまでもひとりで在れるように。