雨の日の失敗
僕は毎朝バスに乗る。バスユーザーの方にはわかると思うが、雨の日のバスはとても混むものだ。バス停から駅前まで続く長蛇の列に、並んでいる人の顔がだんだんやつれてくる。バス会社にも運転手さんにも誰にも責任はないのだけれど、だんだんみんな疲れを隠せなくなる。通勤通学の朝という気分の乗らなさがそれに拍車をかける。
ついこのあいだもひどい雨の日があった。並んでいると足元もカバンもずっしり重くなり始める。目的地まで歩こうか迷うが、僕の足元は革靴。なんとも不運。そんなとき隣に並んでいた小学生たちが雨の日限定の素敵なお遊びを始めた。折り畳み傘をひっくり返してそこに雨水が溜まるのを待つのだ。きっと誰にも覚えのある、子供にとってはワクワクするお遊び。しかし水を溜めるのはつくりのあまり丈夫でない傘で、それを支えるのは小学生の小さな手。末路は目に見えている。そう、ひっくり返した。しかも僕の向きに。彼らのやってしまった、、という顔はなんとも面白かった。そのやらかしの直後に彼らが乗るべきバスがやってきて、少年たちは結局何も言わずに行ってしまった。どう考えても自分が悪いのに知らない人が怖くて謝れない。僕にもよく覚えがあることで、自分は特にそういう時に謝れない子供であったことを思い出した。
子供というのは総じてじっとするのが苦手な生き物で、特にバスを大人しく待つなんてできないものだ。長すぎる列に辟易してしまうことには同感。しかし素敵なお遊びは程々に。隣に並ぶ学生も大人も、みんな雨にうんざりする同士だ。同士諸君、共におとなしくバスを待とうではないか。雨の中駆け出し、遊びたい気持ちをこらえて。