色付きの眼鏡を作った。
作品とか生活とは異なるトピックですが、きっと同じような悩みを抱えている人の参考になれば。
2023.5.21 追記しました。
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生まれた時に神からのギフトとして両手足に脳性麻痺と定形発達ができない脳を贈られた。神とかは信じていないけれども、きっと気に入られなかったのだろう。
両手足に関してはカメラマンができる程度には問題ないのであまり不自由していないのだが、定形発達ができない脳には苦労させられた。というか現在進行形で苦労している。
本やテキストを読むときに文字が滑るというか、同じ文章を繰り返すし、光源によっては読む気すら起きなくなる。
それ以外にも、エクセルとかで作成する表の枠線と文字情報を同列に認識してしまい、3回見返さないと文字が頭に入らない。
感覚としては認識できた気になっているがが全く認識できていなかった(見えていなかった)といったことがある。
働き始めて5年になるが、制作以外のことで摩耗するのはなんだかなあと思ってた時、同じような悩みを抱えている先輩が「イノチグラス」って眼鏡を作ったら長年読めていなかった本が読めるようになったと呟いていたので装具を作る感覚で試すことにした。
両手足が問題なく使えているのはオーダーメイドのインソールやインソール屋が作っている靴を使っているからであって、眼鏡も身体にあったものを選ぶべきかなと。
眼鏡を作る際に、今自分が悩んでいることや、解決したいことを話した。その後に色のついたブロック並べさせられた。どこか懐かしい感じがするなと思ったら幼少期に受けた発達検査のWISKの空気感に近かった。
色のついたブロックを並べた後は色を見ながら片足立ちをして体幹を調べた。青と黒の場合は立てるのだが、赤や白を見せられると途端に不安定になった。ほぼ立てていないに等しい。黄色を見ながら立てたのが意外だった。
私にとって、ブルーが一番しっくり来るだろうなと思っていたので青系でレンズを作ることにした。本を読んだり事務作業で使うのが主な目的なのでピントの合う位置を若干緩くした。焦点距離で言うと40mmでピントの合う位置が70cmくらい。
参考にならないと思うが、私が試したレンズの色も書いておく。
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・ターコイズの一番薄い色 ハイライトが飛ばなくなるように見える。
車の色が落ち着いて見える。
少し落ち着く。
・インディゴの一番薄い色 ターコイズと同じくハイライトは安定。
・ゴールドの一番薄い色 道路のテクスチャが強く見える。明瞭度を上げた感じ。
落ち着かない。展示初日の気分。
4月の高揚感が近い。
・イエローの一番薄い色
思っていたよりも落ち着く。
落ち着くけどソワソワする感じ。
・ブルーの一番薄い色
ターコイズを試した時の感じに近い。
ハイライトは安定して見える。
本が読みやすい。
オレンジの照明の彩度を落とした感じ。
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この後青系の色の濃度を上げていった。ターコイズかブルーか迷ったので左右で異なる色合いにもしてみたが、私の目が右目で殆どのものを認識しているからか右目の色に引っ張られたので、結局左右同じ色の濃いブルーにした。
やっと作った眼鏡が届いたのでかけている。物が見えやすくなった以上に、体幹が安定するのと緊張しなくなったのが個人的に大きかった。おそらく暖色、オレンジ系の色がフィルタリングされているのが要因な気がするが、これが本当に嬉しかった。見ている世界からノイズが消えた。
レンズの色が濃いのでオレンジ色をモノクロ化した感覚に近い。ブルーが強すぎる気もするが、自然光の下だと丁度良くなる。レタッチの仕上げ方に近い見え方を選んで正解だった。
色情報はもちろんだが、ピントの合う位置を変えたのもよかったかもしれない。普通の眼鏡だと28mmのF11のパンフォーカスでバッキバキにレタッチした状態で見ている感覚。ピントの合う位置を変えたおかげで余分な情報を遮断できる。40mm前後に近い画角で物を見ている状態だ。
3年前に新札幌ギャラリーで展示した青いロールの作品あたりから青を基調にレタッチするようになったのも、きっと見ていると落ち着くからだったのだろう。暖色ではないよなと感じていたが、確信を得た気がする。
自分にとって不要な情報を排除、むしることで見える世界が変化することを眼鏡から感じるとは思っていなかった。
レンズの色が濃くてサングラスみたいになってしまった。パーマにサングラスだと某写真家みたいだが、リラックスへの助走は確実に進んだと言えるだろう。
2023.5.15
■1週間経っての感想。
・常にリラックスしている状態。 ここ数年ずっと悩んでいた、緊張のメンテナンスが本当に進んだ気がする。考え込んで焦燥感に駆られる状態から切り離された。まぁしゃーないわなって思う事ができる感覚。レンズが深海色ってことでこのまま脱力してクラゲになれるのではないかと。
・エクセルとかの表がスッと認識できるようになった。(これまでは定規を当てながら指差しで確認していた)
・本が読みやすくなった。読める!というよりかは読むことで消費するエネルギーが減った感じ。文字も全く滑らないわけではないが、以前よりだいぶスムーズに読めるようになった。文章を読むのに構える事がなくなった感じ。
・疲れにくくなった。おそらく自分にとってストレスになる視覚情報が減ったことで、余計な筋肉の緊張が減ったのではないかと思う。普通の眼鏡をかけると情報量が多くてしんどくなるが、そのうち慣れる気がする。体幹が以前より安定した事も関係してそう。
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この手の補助装具は個人差があるのでどうしてもいい声が目立つってしまうのでスピリチュアルっぽさが出てきてしまうな。。。