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留年したっていいじゃないか
こちらのコラム(?)の続きです。
一筋縄ではいかないことは覚悟の上でやるべし
文系と理系、その二つの垣根を取っ払った生き方をしたいと思っている私は、そのバランスにずっと悩んできました。優等生としてずっと生きてきた、純粋培養の私が初めて挫折を経験したと申しましょうか、ともかくも辛くて辛くてどうしようもない時期がありました。
物理専攻の学生として大学院に進み研究がしたいと願う一方、小説も書き続けたい。それは正直、とても難しいことでした。理系はこっち、文系はこっちと道を分けてしまった方が確かに人生やりやすいと、反逆するはずだった既存の教育システムに納得してしまったほどです。
具体的にどう大変だったかというと、まず時間が足りません(笑)学生として普通に講義に出れば昼が潰れます。夜に書こうとすれば夜が潰れます。すると朝に起きられなくなります。授業にも出られなくなります。負のサークルに嵌まってしまった形です。
ちょうど小説執筆(趣味)では自分の色を見つけるべく無我夢中でうっそうと茂る森の中をさまよっていた時期で、そこに3年生から4年生に進級する、という重大な出来事がかぶってしまったのです。
物理科では、4年生に進級する際には以下のような条件を満たしていないといけません。すなわち、卒業研究でトラブルにならないよう必要な保険に入っていること。学生実験の単位が取れていること。その他に、「全部で単位が100個以上取れていること」がありました。私はこれに引っかかりました。
ええ、私は留年しました。
理想を追うなら挫折も覚悟せよ
留年の報を聞いたときは、とっても凹みました。と同時に、そんな現実にどう対処していいのかわかりませんでした。
凹みつつ実家に帰り、お叱りを受け、引っ越しをし……色々と心がかき乱されるなかで、ふっと沸き上がった思い。「やっぱり、それでも趣味は続けたい」
前記事で言ったように、批評を受けても向上心に燃えられる人は趣味を極める素質があると思っています。そしてその自分の基準に私は当てはまった。留年して3年生をもう1回やり直しながら、それでも執筆は続けようと決心しました。
結果として、その判断は正しかったように思います。初めてコミケに出掛け、その縁で同人デビューもこの年に果たすことができました。がむしゃらに書いていたウェブ小説も、終着点を見据えた上で「ここであえてこういう書き方をすることでミスリードを狙おっかなー」などと思えるようになりました。
文理両道と私は自分の理想を呼んでいますが、二兎を追い二兎を得たい系の理想にとどまらず、理想を追うときには挫折も覚悟しないといけないんだなあと痛感しました。そして、挫折は自分を試す機会であるとも。
時間不足の解決法
二兎を追うには時間が足りないと言いましたが、最近はそうでもなくなってきました。なぜか。純粋に時間繰りが上手くなったのかもしれませんが、執筆に関して一種のメゾットができたからだと思います。
どういうペースでどんなものを書くのか、そういった自分の執筆との向き合い方が確立されていなかったからこそ、留年という挫折を迎えてしまった時期は時間が足りなかったのだと思います。しかし、いま、私は自分の限界を知り、その上でペース配分ができているように感じます。
また、留年してよかったこともありました。大学の授業は高校までと異なり、いままさに学問の最先端を切り開いている理論を学ぶわけですが、指導方法も確立された既存の理論を学ぶのとは違う難しさがあります。
まず、概念をちゃんと掴むのが難しい。いくら問題を解こうとも概念がわかってないと余裕で単位は落とします。だからといってノートばっかり見て問題演習をしなくても単位は消えます(笑)要は、高校までの勉強方法を変えなければいけないかもしれないということです。
そんななか、二兎を追う系の私はただでさえ学問の理解がなおざりになりがちでした。留年して、落とした講義を再び受講することで、分かっていると思っていたことが分かっていなかったことに気づいたり、休んでいた授業に出られたり。
正直、大学で講義以上のことを学びたいと思っている人は、一年くらいの留年は覚悟しておくべきかもしれません。勿論、学費を負担する保護者のためにも在学年数はなるべく少なくすべきですし、理想があるからといって勉強をサボってもいいことにはなりません。しかし、一生懸命頑張ってもうまくいかないこともある前提くらいで臨んでおいた方が、いざ挫折がやってきたときに精神的ダメージが少なくて済みます。
春瀬由衣
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