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The SaaS Sales Method: Sales as a science

The SaaS Sales Method: Sales as a science を読みました。文字通り note をとるような感じになってきた。

スーパースターからサイエンスへ

創業期のSales は大事で、優れた能力で Sales ができるスーパースターのLeader や IC が必要。そういった人は、industry で何十年も経験を踏んできて、優れた直感的な判断でDealをとってCloseできる。しかし、スーパースターを採用するのは難しく、コストもかかる。Keep し続けるのも難しいし、そこに頼ったビジネスは不安定である。現在は、大型の Deal というのは減ってきていて、20%の優れたSales が80%の Revenue を出すということは少ない。スーパースターの文化からサイエンスの文化へ転換していくと良い。その際に注目するのは Process, Technology, Enablement, Skills, Teamsの観点で Process が土台にある。スーパースターに任せるのではなく、プロセス改善、情報共有などで、スーパースターに近づけていくという感じ。

発見としては、Enablement  や Tool の導入は、営業が不足しているといった人材面の問題を解決するために行われがちだが、ただやみくもにやると、Enablement も Tool も増えてしまう。実現したいプロセスがあってそれに向かって実施するのが重要。Process, Technology, Enablement, Skills, Teams には担当すべき人がいて、土台を構成するProcessを担当するのは Sales Analyst/Scientist, Sales Strategist。これは重要だと思うし、大企業だと Process がカオスになると思うので、ここに Science を入れて、最適化していくのは良い。

スーパースターからサイエンスへの道をたどってきた例が営業以外に上げられているのも面白い。ここで上げられているスポーツ(野球)はまさにそんな感じだ。

Changes in B2B Sales

前払いの数年コミット、1年コミット・・・SaaS のように売り方は連続的に変化するという考え方。リスクの所在、Win Ratio、Sales Cycle のスピードが変わる。リスクは顧客から販売側へ、Churn しやすい SaaS はWin Ratio も低いが、Sales Cycle のスピードは速い。単価も Win Ratio もそもそも低い SaaS においては、スーパースターでも実際にあげられる Revenue には限界があり、それ以外の Performers でも十分に Revenue を上げられる。これは スーパースターのみに頼るスタイルからの脱却のポイントといえる。顧客も Enterprise もあれば SMB もあり、それぞれ特化した役割を置いて、効率化している。SMB であればマーケティングからの大量のリードを効率よくさばくポジションを設け、Enterprise であれば初期の立ち上げをできる Account Executive を設ける。

SaaS Sales Method

Transnational Selling 課題発見ができていて、ソリューション、製品をすでに色々見ていて、コストややりたいこと、という絞られた観点でベストな製品を探している顧客に売ること。価格、成熟度、サポート(24時間など)、すぐに使えるか、などで売れるかどうかが決まる。

Solution Selling 製品を売るだけではなく、顧客の課題を理解して、製品がどのように使えるかを説明して売る。ニーズを聞く Diagnosis とデモを通じて製品が役に立つことを示す Prescription を行う。Sales Cycle が短くなっているので、スピード勝負で、すぐにデモできることが重要。採用基準が決まってから顧客と会話しても、その基準に合わないことが多く、競合に負けてしまう。勝つためには採用基準を決める前から会話する。

Consultative Selling 上記は基本的には顧客主導 (inbound)だが、Consultative Sellingでは売り手の経験をもとに売り手主導(outbound)で、顧客の採用基準を決める。B2Bではいまもなお一般的な方法。しかし、顧客が第一に考える課題に行き着くかどうかは顧客次第であり、完全なコントロールは無理。

Provocative Selling Consultative Selling では、すでに顧客が感じている課題をベースにするので、全く新しいソリューションを売ることができない。市場を理解して顧客を Provoke (挑発)して、新しいソリューションを売る。もともとかなり経験がないとできない売り方だったが、最近はインターネットでたくさんの情報を得ることができるのでやりやすくなった。

Inside Sales Provocative Sellingがやりやすくなったので、Inside Sales によるマス向けの展開が可能になった。マス向けのメールを撒いて、それを追跡するということも可能になってきた。まずは SMB へ、次に Enterprise へとアプローチしてきた。ただし、Inside Sales がうまくいかないケースもよく耳にする。詳しくないリーダーが、人材の問題と考えて大量に雇用したり、賃金が低いポジションに位置づけたりするのは良くない。

The Saas Sales Method ソリューションを売ってからも顧客との関係が続き、アップセルやクロスセルに繋げられる。上記の売り方に加えて、全体のカスタマージャーニーを考え、カスタマーサクセスに向けて顧客と一緒に働くことが求められる。科学的な考え方、Go-to-market プラン、販売戦略はカスタマージャーニーに適用される。

The Science

ここは各フェーズにおける Dealの量、Conversion、かかった時間に関する数学的な考え方を提供している。Conversion Rate が各フェーズでバランスが取れていないとだめで、大量に MQL が来ても AE がさばききれない。隣接するフェーズの Conversion Rate でマトリックスを作って分析するのは面白い。

各フェーズで計測すべきメトリクスも明示されていて良い。Web サイトの訪問は Prospect、資料のダウンロードはMQL などの具体例がある。True-inbound (顧客からの直接の問い合わせなど)と、Quasi-inbound (資料のダウンロードなど)があり、それぞれに対するアクションは同じではない。

Revenue 観点では、MRR、ARR、LTV の考え方があり、それらは Conversion Rate や Price で計算できる。逆に、どの Conversion Rate を上げれば Revenue が上がるかを計算できる。

Moments that matter

重要な瞬間があるという話。あるホテルは見た目はそこまでではないが、プールから電話するとすぐにフルーツを運んでくれる。その瞬間が良くて、小さいプールであることも忘れてしまう。星 4.8 の評価のようだ。

SaaS Sales でも同じで、最初に顧客にリーチするときは重要な瞬間の一つで、顧客に課題に気づかせてあげることを支援する。これは売り手の話だが、上のホテルの例にもあるように、買い手視点で考えて重要な瞬間を定義しないといけない。買い手視点で考えると、課題に気づかせてくれた、となる。売り手視点で考えると逆効果である。

重要な瞬間が決まればそこに注力して活動する。しかし、顧客が製品のインパクトを感じないケースも多い。インパクトが認知されるのは合理性(例えば数値的なメリットなど)と感情(使いやすいなど)による。人間は、最初に感情で判断し、次に合理性で判断するという研究もあるようだ。感情による判断はコスト削減のソリューションが関係することがある。わかりやすいダッシュボード、数回のクリックでできる、など。感情的な判断は習慣のようなもので変えにくい。よくあるインパクトしては、利益が上がる、コスト削減できる、顧客体験を改善する(コラボレーションツールの導入など)がある。

インパクトは与えても顧客がほしいと思わなければ使ってもらえない。nice-to-have から want-to-haveに変えるためにはどうすればよいか。顧客側に大きな Pain が発生して、どうしてもやらないといけない、というCritical Event が発生するタイミングを認識できれば、そこでアプローチすることで顧客は買ってくれる。「この日までにできないと何が起こるか?」という質問は、Critical Event を認識するのに良い質問。「予算がない」という顧客の回答は勘違いしがちで、SaaS の場合は予算の観点では導入しやすいものなので、実は「優先度が低い」ということを示している。

最後に顧客が買うことを支援する。製品採用のクライテリアはなにか問い合わせ、競合を並べてクライテリアを評価する。顧客のビジネスを考えて、実際のインパクトがなにか($500/month のコスト削減になるなど)を計算して示す。そして、顧客にとって何が重要かを聞くだけではなく、これが重要であると伝えられると良い。

Blueprints

青写真 (Blueprint) を作成する目的は、重要な瞬間でどのようにアクションをとるべきかのフレームワークを作ることで、本格的なものであるべきである。決まった形で作成できるようなものではなく、決められた売り文句で、ビデオに録画して・・・というようなやり方は、長期的にはうまくいかない。作成において考慮すべき原則は、顧客のペインを理解すること、最初に感情で次に合理性を訴求すること、顧客に説明するより教育(Educate)すること、購入プロセスを支援すること、ただ会うだけでなく毎回バリューを提供すること、である。これらの原則から重要な7つの瞬間を挙げている。

例えば最初の瞬間はペインを持っている顧客にリーチすることを挙げている。この瞬間のために、見込み客のリストを作成して、パーソナライズされた email を送る。ここでの青写真としては、顧客をピックアップしてよく調べる、顧客にフィットする価値の提案・ユースケースを取り上げる、オンライン調査・電話調査、製品に過度に言及せずに最新状況を具体的に示す、顧客にとっての Critical date を認識する、価値提案にもとづいて感情・合理性の両面からインパクトをあたえる、ことになる。

結局、ここまでのSaaS Sales の流れをまとめると、1. 重要な瞬間を認識する、2.Conversionのメトリクスを測る、3.その瞬間で実行すべき行動を決めて青写真の中で可視化する、4.どうやってその瞬間を改善するか議論する、5.メトリクスを10%改善するまで15-30日間隔で繰り返す、5.パフォーマンスを他と比べる・ベンチマークする、となる。

How to keep going

Sales がスーパースターによる芸術でなくサイエンスとするためには、これまで述べたようなプロセスドリブンなsales を作る必要があるが、それは簡単ではない。しかし、ここへの投資はいずれ、予測する機能、スケーラビリティ、究極的には顧客へのインパクトと言う形で良い結果につながる。

ここでは Step-by-step での進め方を紹介している。まずは社内の Top からの Buy-in であり、すべてのCustomer-facing role との 1日のワークショップを勧めている。次にデータモデルを構築し、データの収集を行うことで、Conversion rate や Timeline に関する知見を得ることができる。重要な瞬間を特定し、それに対して青写真を作成する。青写真はテンプレート化して配布するとスケールしやすい。これらを使えるように社内の enablement を行う。そして、作成したプロセスを実行し評価する。

感想

SaaS の Sales の全体像がよくわかったし、Conversion rate のような数値にもとづく提言も多くて理解が進んだ。Blueprintsは e-mail の例文まで掲載されていて、具体的にどういう風に顧客と会話すべきかなど、これまで勘と経験で進めていたところを改善できそう。SaaS Sales Method の分類は面白く、これまで一緒くたにして考えていたが、頭の中で整理することができた。

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