エミー賞、『SHOGUN』主演、作品賞受賞でテレビに拍手しました。
ひと晩明けて。
きのう朝8時からU-nextでレッドカーペットを見て、授賞式を見ておりました。
端から端まで、この部門はこっちに賞が行ったのかーと、いちいち思い詰めまして、真田広之さんが主演男優賞で受賞、そして『SHOGUN』が作品賞を受賞などなど。そんな日記です。
わたしは、カズオ・イシグロの小説が好きで、彼がどんなポジションの作家だといったことは知らずに、ただ、好きだし、新作が出ると入手していたのですが、ある日、ノーベル文学賞受賞のニュースが飛び込み、は!?!?!と驚愕して、日常生活が突然、お祝い気分にあふれて、その夜、赤ワインを飲んだのが何年か前のこと。
エミー賞は、ノミネートがあるので、心の準備はできていたけれど。
ドラマ部門の主演男優賞の発表を、力をこめて見守っていましたら、ヒロユキ・サナダの名前が読み上げられたわけですが、なぜか喜びの瞬間は、耳を疑うんですよね。サナダって言った?サナダって言った!?!?と、わたしの脳みそは繰り返します。テレビ画面は、ノミネートされてる6人の顔が映されていて、受賞した人を特定しようと、目が追います。動きが大きく、だけど拍手している人……は、他者をたたえての拍手は選外の人ですから、違う、とより分けると、真田広之さん、まったく動いてないんですね!!! 写真かなと思いました。体幹が強いというか、リアルも侍ですか!!! さむらいという言葉はむやみに使いたくないものですが、そう思ってしまった。動かない。こんなに動かないで、ほんとに受賞したのだろうか、会場にいらっしゃる??と心配までしましたら、しばらくすると、通路を歩いく映像になったので、おおっ、やはり受賞なのか、と思いました。
このときのプレゼンターは、スティーヴン・ユアン。映画『ミナリ』、ドラマ『Beef』に主演して、映画『NOPE』にも出ていたり。ウィキペディアによると韓国系アメリカ人。そのアジア系の彼から、アジア系の真田広之にトロフィーが手渡されるという、たぶん、とても稀な瞬間となりました。
拍手!! テレビに向かい、拍手し続けてしまいました。
これで作品賞も行けるかもしれない。
技術部門で、すでに多数の受賞があった『SHOGUN』。こうなってくると、作品賞まで手が届くかどうか、という見方がありますが、同時に、アジア系の作品で受賞ができるだろうか、という気がかりも生まれます。
助演男優賞は、浅野忠信、平岳大のノミネートがありましたが、受賞にはならず。『モーニング・ショウ』のビリー・クラダップが獲りました。その瞬間、いやな予感が。持ち上げられたけれど、作品賞までいかないんじゃないか……。ううっ。ビリー・クラダップが演じたのは、放送局で出世する役で、けれど悪辣ではない、けれど……という現代的なキャラクター。ですが、前のシーズンのほうが良かったかな。浅野忠信は、妙にニヤついた調子よくこずるい侍キャラクターが特徴的でしたし、そして、あのさいご。理屈では説明しきれない奈落に落ちるような展開が恐かった。平岳大はエミー賞の公式が写真をツイートしていたので、有力候補なのだなと期待を膨らませていました。
俳優さんの賞は、なにが審査基準になっているか不案内ですが、どのようなキャラクターを演じているか、という、キャラクター造形の賞と見ています。脚本家の範疇でもありつつ、新しいキャラクターなら文字だけではむずかしいところを、俳優が一瞬で立体的にしてくれる、ああ、この人、いる!の「説得力」が重要なのかなと推測します。
わたしにとっては、『SHOGUN』の主役、吉井虎永は、ユニークさが足りず、新しいキャラクターではありませんでした。ある種、侍の典型であり、表面が「かっこいい」。弱点が明かされず、なので、どうしたらピンチになるのかがイマイチわからずに、ドラマにのれなかった。かろうじて、幼少期に、じつは人を斬ることに躊躇して、家臣に尻拭いをしてもらったというエピソードがありました。
これから、シーズン2はどうなっていくでしょうか。
わたしは、『SHOGUN』は一種、ファンタジーものとして、城、戦い、勝者と敗者、斬新なルール、という枠組みで楽しまれたのではないかと推測しています。フレッシュな見栄えで、かつ、日本の現実的な伝統によりそれなりの見栄えのデザインは確保できています。しかし、ストーリーは甘く、視聴者への語り掛けが不足していた部分があると感じました。原作はおそらくオタク小説で、リアリティの構築範囲が狭いだろうことも原因にあるのかもしれません。今後は原作がない部分に入るそうです。インスパイアされた史実にとらわれすぎずに、キャラクターの深掘り、争い、運命の翻弄、人間同士や自分自身への裏切り、権力などが、大胆に、新しいかたちで描かれることを期待しています。
たぶん続きを書きますが、本日は、おわり。
追記。
会場の動画をThe Hollywood Reporterで見たら、真田広之さんは名前を呼ばれてうなずいたり右を見て挨拶してたりしていました。わたしの脳内が半走馬灯になっていただけだった。笑。
ネクタイの金色、かっこよかった。
そして動いてないのは、ほんとに写真で会場に来てなかったっぽいドナルド・グローヴァー。ファンです。