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#4 幼少期編 〜あの日のよっちゃん〜

先日、アニメ“あの花”で大号泣した私だったが、今も忘れられない衝撃的な友達といえば“よっちゃん”に他ならない。

よっちゃんは、いつでも周囲を気にしない大胆さと、あっと驚かせる行動力をもった男の子だったと思う。

出会いは幼稚園だったが、その頃から彼の破天荒さは群を抜いていた。

当時人見知りだった私は、基本的に家族や友達以外の人と話すことができないほどの引っ込み思案だった。

お店に連れて行けば行きたくないと泣き叫び、幼稚園や保育園に行ってもやっぱい行きたくないと泣き叫ぶ。

むりやりにでも大人を引っ掴み、ここで負けてなるものかと暴れるのだ。周りはいい迷惑だろう。

いざ行ったら行ったで、今度は誰と話すこともなくずっと一人で砂をひたすらにいじっているのだ。きっと幼稚園の先生も、かつてこんなくらい子がいただろうかと頭を悩ませていたに違いない。

そんな私のもとに彼は突如として現れたのだった。

当時幼稚園では竹馬がブームで、誰もがその足場の高さで競い合っていた。

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当然、ビビりな私は、1番下のレベルで細々と楽しんでいたクチだった。

ところがよっちゃんは、いきなり足場を竹馬のてっぺんまでもっていき幼稚園中の子達をあっと言わせたのだ。

結局竹馬から落ち骨折するのだが、それでもよっちゃんは飄々と笑い、次なるターゲットを決めて新たなチャレンジを開始するのだ。

その後も木に登っては飛び降り、遊具に登っては飛び降り、とにかくよっちゃんは幼稚園のありとあらゆる高いところに登っては飛び降りるという奇行を繰り返していた。

彼曰く「怖いけどそれが楽しい」と、なかなかのクレイジーさを発揮していた。

きっとダイ・ハードに出てくるジョン・マクレーンくらいはクレイジーだったと思う。

私は恐れを知らない彼に対して次第に憧れるようになっていった。そして全く真逆なタイプだった私とよっちゃんは徐々に仲良くなっていく。

そんな彼と、お互いの自宅でも遊ぶほどの仲になったある日、あの忘れられない出来事が起きる。

その日は午後から天候が悪化し、遊ぶ約束をしていながら、「これから雨になるけれど、よっちゃん来るのかなあ。」などと、幼いながらに心配していた。

不安は的中し雨はパラパラと振り始め、よっちゃんと約束していた時間になる頃には、本降りとなっていた。

約束はしていたもののこんな雨になっちゃったから、よっちゃんは来ないだろうなと諦めていた時、家のチャイムがなったのだ。

「まさか」と思ってドアを開けたとき、そこにいたのは身体中は傷だらけで、服はボロボロに破け、鼻血を盛大に流したよっちゃんだった。

あまりの姿に私は慌てふためき、うちのばあちゃんは、

「きゅ、救急車!」

と電話をかけようとしたほどだ。

しかし一家騒然としている中、よっちゃんは、

「さっきそこの坂で、雨だから自転車が滑って一回転しちゃった。」

と笑いながら平然というのである。もはやクレイジーの域を超えている。ジョン・マクレーンも真っ青だろう。

とにかく手当しようと家に入れて傷をみると、幸い見た目ほど大きな傷でなかったためひとまず一安心し、寝かせて様子を見ることにした。

ちなみにここまでの間、私はひたすらオロオロし続けていた。多分今までの人生でもあそこまでオロオロしたのは、この時と受験票をなくした時くらいのモンだったと記憶している。

だが彼は、坂で自転車が一回転したことがいかにすごかったかを力説するのだ。

「あれは一回宙に浮かんでたね。ボク飛んだんだよ、すごくない?!」

と、まるでライト兄弟が初めてフライトに成功した時のようなテンションで、自分が飛んだ時の様子を語るのだ。確かにすごいのだが、そこじゃないとツッコみたい気持ちである。

これには、私だけでなく私の家族も総出で呆れる他なかった。

そんなよっちゃんは最終的に迎えにきた、彼のお母さんに

「アンタ自転車壊してるじゃん、何してんの!」

と、まさかのケガよりもひしゃげて壊れてしまった自転車のことで、大激怒を喰らうはめになる。

この時ばかりは、破天荒なよっちゃんも泣きながら謝ることとなった。

よっちゃんとの出会いを経て、次第に私も人見知りを克服していくのだが本質的にはビビりなので、よっちゃんにもジョン・マクレーンにも憧れを抱くのみに留まった。

今考えても、こんな友達はなかなかいなかった。

違った意味で衝撃的な友達にはその後出会うことになるのだが、それはまた別のお話で。

竹馬の友とは、昔の人はよく言ったものだとつくづく思う。



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春先 生
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