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#18 社会人編 〜一人暮らしと引っ越し②〜
初めての引っ越しというのは結構難儀なもんで、いまいち何をしたら良いかが分からなかった覚えがある。だからこそ、特に印象深かったなあと今でも思う。
最初の物件探しは、“初めて“の不安と期待を抱きながら始まった。
どんな家にしたらいいんだろうか?
費用ってどれくらいかかるのだろうか?
荷物ってどうやって運ぶんだ?
など、とにかくありとあらゆることが分からなかった。
こういう時は友達に頼ろう。と人生始まって以来ずっとお世話になってきた他力本願を発揮して、友人に連絡をする。
一人暮らし経験のある友達に片っ端から聞くと、返事は大抵同じ内容だった。
「自分がどうしても妥協できないことをリストアップして、店舗に持って行ったらいいよ。」
しかし困ったことに、自分は何が妥協できないのかが分からない。今までぬくぬく実家で過ごしてきたツケが回ってきたか、くそう。
一人ぼやきつつも分からないので、ないと不便だなあという条件をもとにリストアップしてみた。
①風呂・トイレ別
②2階以上
③軽量鉄骨or鉄筋コンクリート(木造やだ)
④賃貸マンション(アパート…)←生意気
⑤交通の便が良い(駅・バス停から近い)
⑥近くにスーパーマーケット、コンビニがある
⑦そこそこの広さ
とまあこんな感じだ。
おそらく、これを見た大抵の人は
「そんな物件あるわけがない。」
と思うだろう。そう、ないのだ。
というか、こんな物件に社会人ペーペーの大学生が出会えるわけがない。ちょっと君、社会を舐めていないかと昔の自分に言いたくなる。
知識も経験もないというのは非常に恐ろしいもので、探す前から半ば…というよりほとんど崩壊したリストを抱え、私は意気揚々と不動産屋さんの扉を叩いたわけである。
「いらっしゃいませー!」
と最初に元気よく笑顔で迎えてくれた店員さんも、私の条件を聞くと引き攣った笑顔になる。
「ええと…もう少し絞ってみるとどのような条件が1番大事ですか?」
できるだけ条件を緩くしようと店員さんも頑張っていたのだが、
「できるだけ、この中の条件がたくさん当てはまるところがいいです!」
などとよく分からない返答をした私に、店員さんもはやお手上げ状態だった。
それでも大変気を使ってくれて
「とりあえず色々な物件を出しますね。」
と言って、最初のリストにかかっていそうな物件を20件程出してくれたのだ。
…20件?
そう、すでにこの時点で店員さんがいかに困っていたか、今の私は理解できるのだが、当時は
「やったー、こんなにたくさん候補があるじゃん。」
と、普段ならない不必要なポジティブを発揮してしまったのだ。
そして、決め手というものも私はもっていなかったので、最終的に私が出した結論は
「これ全部回って見てもいいですか?」
という答えだった。
一瞬、「えっ、本気ですか?」みたいな顔で私を見た店員さんのことは私は今でも忘れられない。
そしてこいつは手がつけられないと見たのか、途中でベテランっぽいイカつめなおじさま店員に変わり、異例の20件内見ツアーに繰り出したわけである。
おじさま店員の運転で全ての物件を回っていくのだが、やはりというは当たり前だが、条件に全て合うという物件は一つもなかった。
あーだこーだろベテラン店員と議論を交わし、夕方になって二人でヘトヘトになって店舗に戻ってきたのは良い思い出である。
いや、ベテラン店員からしたらなんてめんどくさい客なんだ、と思われていたに違いない。
それくらい、悪い意味で当時の私は妥協しなかったのだ。
ただ、そこはさすがベテランというところだ。悩む私に
「でも結局賃貸なんで、住んでみて不満があればまた引っ越すこともできますし、今見た物件も良い条件の所からもう埋まり始めます。決めるなら早い方がいいですよ。」
と聞かん坊の私を諭してくれたのだった。
確かに、なんだかんだで実はひと月近くも物件探しをしていたので、2月も中旬を迎え、物件探しとしてはだいぶ遅い部類だった。
というか熱意をもっている割に、そんなタイミングでまだ良い物件を求めていた私は本当に常識がまだなかったなあとつくづく思う。
ベテラン店員の鶴の一声もあって、結局私は家賃と部屋の広さ、それからお店の近くという条件を外し、物件を決めたのだった。
契約書を書くときに、店員さんと熱い握手をしたのは私sideは
「良い物件が決まってよかったね。」
の握手だったと思ったのだが、今思うと店員sideは
「ようやく面倒な客の契約が取れた。これで終わる、一安心だ。」
の方かもしれないなと思っている…きっとそうだろう。一応自覚はしている。
そんなこんなで無事新生活を始めた私だったが、住んでみるといやはや自分の求めている条件は実は違うんだと気付かされる。
なんだかんだ3年住んだのだが、その後また引っ越しをすることになる。
その時掲げた条件は
①風呂・トイレ別
②収納がある
③家賃が安い(方が良い)
と、最初の物件に比べるとだいぶ現実的なものになっていたのだ。
物件も3件くらい見てあっさりと決まり、今は不自由なく生活できている。
当時の破天荒な物件探しのことを思うと、やはり何事も社会経験は大事なんだなあ、としみじみ感じた。
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