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月夜の渡り

渡り鳥が満月を横切るのを見たことがある

高校へは、自転車で通っていて
いつも一緒にいた友達は
電車通学で
一時間に一本しかこない
電車を待ちながら
ベンチでお喋るすのが
いつもの私達だった

さよならをすると
いつも辺りは真っ暗だった

自転車を漕ぎ出して
少しの時間だったと思う

わたしは呼ばれるように高い山と
広い川が作った
真っ黒の空を見た

黄色の暖色の月
そこに写り込んだ真っ黒なシルエットに
目を奪われた

大きな鳥が
三角の隊列を組んで
満月を横切っていった

気配がした
音がしたとも言える気がする


影絵のように
背景から浮かび上がって
月を横切り終えると
夜の闇と同化していった

わたしはその一瞬の光景を
目にした


雁はその昔
亡き人たちとの文を繋ぐ使者
そんな風に思われて来たらしい


もし、あの光景に意味があるとしたら
わたしはあのとき
どこからか運ばれてきた
文を空から受け取ったのかもしれない


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