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ステージに選ばれた人

 演劇やコンサートをそんなに数は観ていない私だけれど、生の舞台やテレビを観ていて「あ、この人はステージに選ばれた人だな」と思う人がたまにいる。

 それは、演技が上手い、歌が上手い、ダンスが上手い、そういった基本的な事項が際立って見えるということではなく、ステージがその人を呼んで、その人の意思とは異なる引力によってステージに立っている人のことだ。職業を英語で"Calling"というような、そんな具合である。

 舞台ど素人の私が言うのもなんだか烏滸がましいが、小さい頃にバレエで舞台に立つ経験をしているからか(ということにしておこう)、「目を引く人」を見つける勘の良さ、みたいなものは持っている気がしている。
 そんな私が舞台を見ていると思うのが、「端役でも目立つ人は目立つ」ということである。


 以前、とあるテーマパークで、ゲスト参加型の劇形式のアトラクションに入った時、選ばれた何人かに役柄が与えられる、ということがあった。それぞれがその役の動きをちょっとしてみて、キャストの人がゲストをいい感じに選んでいく、という具合である。序盤に何故か選ばれてしまった私は、キャストの隣で人が選ばれていくのをみていた。ここで驚くのが、「あ、この人目立つな」というのが客観的にそれぞれの役によって存在し、そして大抵キャストの人がその人を選んでいくのである。服の色が目立つか、動きが上手いか、とかではなく、「あ、この人選ばれるな」という感覚があった。不思議なもので、役が変わると目立つ人というのが変わる。適性というか、わかりやすくその人だけが輝くのである。


 演技経験が長い人、というのは、往々にして舞台の使い方、舞台の空間を把握する能力が高いのではないかと思う。どこまで自分が動けば、どれくらい大きく見えるか、客観的な舞台としての空間を120%使うことが割と無意識にできてしまう。でも、「ステージに選ばれた人」はこれとはちょっと違う。どこが違うか、というのがうまく言えないのがもどかしい。選ばれるかどうかは経験に依存しないが、天性で選ばれる人と努力によって選ばれる人と、2パターンあるのだろうな、というのは人によってある。新人でびっくりするくらい目を引く人も、何舞台も踏んである時突然輝く人もいる。


 きっと私自身もそうなのだろう。私が呼ぶことも、呼ばれることも、1発目から光ることも、何年もかかることもある。私がこれから出会うものが、”私を選んだステージ”であるよう願いを込めて。

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