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松林図屏風
長谷川等伯の生涯を描いた小説『等伯』を読んだ。表面的な美しさ、デザインを描くのではなく、本質を追求し続けた等伯。自分がモノクロフィルムを使うこだわりと重なる。綺麗な写真を撮りたいのではなくて、本質(肌ざわり、空気感)のある写真を残したい。それはたぶんデジタルでは難しくて、カラーでは描けない(と自分は思い込んでいる)。例えば田淵行男のような山を撮りたい。まだ見たことのない”松林図屏風”に想いを馳せて。
以前書いた日記。わしは彼に惹かれて、出生の地である石川県七尾市まで足を伸ばしたこともある。そんな等伯の代表作 ”松林図屏風” が、東京国立博物館で限定公開されているという。まだ間に合う。ソロキャンプで焚き火ナイトを楽しむ予定だったけれど、そんな場合ではない。
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東京国立博物館へ。AM9時半の開館と共に。
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気持ちを落ち着かせながら目的の展示場所へ。
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眼鏡を外して、白菫色に霞んだ視野角で、見るような見ないような心持で対峙する。湿気、冷たい風、音。そんな本質が自らの血潮に流れる感じを得て、満たされた気持ちでこの場を後にした。