ジャニスロックユーと混じり気のない美しい音楽の下で
正直、僕はたぶん悔しかった。総勢6人のお客さんが来てくれた。3/23(土)、岐阜のadapterでの鶴瑞輝さんとの2マンライブは、僕のお客さんということで言えば1人だった。
そんなことは本当に、その日演奏をする上で、どうでもいいことなんだと思うけれど、とにかく、人数というものは明確に僕の前に、もう少し広げれば僕らの前に、これまでの自分の音楽の印のように現れる。それがまずとても悔しかったし、それは自分が誤魔化しちゃいけないことだと思うから、始めに書いた。その6人のことを心から愛おしくも思ったし、絶対に誰にとっても後悔のない時間にしようとも思った。みんな、分かってないなあとか、タイミングが合わなかっただけだよなって、強がりはいくつでも浮かぶのだけどね。この話はいったんここまで。
この日共演した鶴瑞輝さんというシンガーは、僕が大好きなロックミュージシャンの一人。九州出身で、数年前からは岐阜に住んでいるみたいで、「弾き語り」っていうカギカッコ付きで未だに区別したくなる音楽の形態の話を置き去りにして、僕は鶴さんの音楽と人がとても好きです。
どんな音楽かは、その日がどんなライブだったかは、文章で書くことは、到底おこがましいことだと思うのでしないが(文字は意味を限定しすぎる)、彼のライブを観ながら僕が思ったことは、「ジャニスロックユー」ということだった。もう少し説明すると"Janis rocks you!"ということです。
とにかく、僕はロックという音楽が好きで、よかったなあと思った。それはこの文字がイメージをそれぞれの人の心の中にもっているから、うまく伝わらないだろうし、誤解して伝わってしまいそうであまり使いたくないんだけど、それはもはや、本当に観ることが希少な音楽で、混じり気のなく美しい、そして鶴さんのあたたかくて人間味のあふれたストラトキャスターと声人情にだけ混じって発せられた音楽だった。僕はそういうものが観れて、心底嬉しかった。そして、もう成れるわけもしないが改めて憧れた。そうやって、ずっとそういう人やその感触に憧れ続けるんだろうなとも思った。
僕は、こんなことを言うとずるいが、病み上がりだった。1時間の持ち時間をやれるのか、だけでも不安を潰しながらステージに上がっていた。
それを普段飲みもしないビールでさらに潰しながら、演奏をした。10曲歌った。どれも、といつもひとくくりにはできないけれど、最後の曲を弾き終えたとき、胸をなでおろす感覚の方が近くにあった。やりきったとも思ったし、もってくれたんだな、おれの身体、、、ッと、そう思いたくなるような気分でもあった。ステージ上では2回もお客さんと乾杯をした。
帰り際に、鶴さんが僕のことを褒めてくれた。今日も、ピンときたよと、いつもの笑い顔で話してくれた。僕はその言葉が、何とも違って、僕の心の中に贈りものみたいなものを詰め込んでくれたような気持ちにしてくれた気がした。CDを売ることとか、新しいお客さんを増やすこととか、新しいミュージシャンと仲良くなることとか。いろいろすべきことがライブにはあるはずかもしれないんだけれど、その贈りものみたいな何かをもらえることを抜きにしたら、強がりでも誇張でもなく、それはつまらないものだなと思った。CDを買うなんて、語弊を恐れずに言ってしまえば、情けでも買えるんだもん。
僕らはやりきった!と鶴さんと言い切ったのが気持ちよかった。その言葉をあてて胸を張れるライブだったと思う。そして、ちゃんと6人のお客さんと店のお2人が、今日を目撃してくれていた。
だから、店を出るとき、僕は少しも悔しくなかった。adapterという岐阜の、開店4年目ほど、おじさんとその奥さんが2人で営んでいる店。ソーセージとトマトパスタ、美味しかったなあ…。とか考えていたと思う。駅から近いってやっぱりいいなあとか。
しばらくライブが空く。1ヶ月後の4/20の名古屋までぽっかりと。春、苦手なんですよね。僕もみんなも何から何まで、自分のことで、精一杯になってしまいそうな気がして。
そんな日が、平成31年の3月23日でした。
急に平成って使いたくなりますね。すみません。
では、読んでくれてありがとうございました。またまた。
(写真は鶴瑞輝さん)
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