『三都メリー物語』vol.21

 しんしんと降る雪が、音を吸収しているかのように静寂な夜の暗闇にアパートの表札を灯す明かりを頼りにpostの中から一通の封筒を手に取った。
裏を見ると、藤岡准教授からだった。雪が、その封筒の上に乗っては溶けて水になり紙がふやけた。レイは、濡れたところを手で軽く拭いた。


 雪の積もる階段をすべらないようにゆっくりと上がり鞄から鍵を取り出し扉の鍵を開けた。外より冷たく思える部屋に明かりをつけ、手紙を読んだ。

レイ、元気にしてますか?
私は、相変わらず大学で准教授として働いている。
家のこともなんとかやっています。
レイは、「少し一人になりたい」と言って出ていってしまったが、レイの気持ちも分かっているつもりです。
前の奥さんの事を、私もそしてレイも忘れることが出来れば、その時は戻って来て欲しい。
いつまでも待っています。

名前の横に住所が書き添えてあったが、変わっていなかったので引っ越していないようだ。
手紙を書くか、何か連絡するかレイは迷った。

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