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【小説】相手のことを知ると言うことvol.10

 青い空の下、これでもかと豪華絢爛に満開に桜が咲いている。けれど中里由麻は、毎年のような桜と違って、それはまるで川崎先生のために桜が咲いているかのように思えた。
 川沿いの桜並木を由麻と林翔平と二人で歩いている。
「川崎先生は、あの若さで亡くなった。結婚も出来たはず。家族だってもてたはずよ。なんで?生きてた意味あるのかな?」
「意味あるよ。川崎先生は医者になるくらいだよ。小学校しろ、中学校にしろ抜群に成績が良かったと思う。クラスの中には川崎先生に負けないように努力した子もいたんじゃないかな。人はやっぱ人が影響して、人で成長して行くんだから」
「うん」由麻は、頷く。
「別れていた僕らだって、川崎先生がいなかったら、またこうやって会うことはなかったかもしれない。人は、たとえ短い命でも意味があるんだよ」
「そうだね」
 青い空に雲雀が鳴きながらあまり上手といえない飛び方で上へと向かって行った。

 臨床検査技師の岡部くんが、
「snsでフォロアーさんが1000人超えた」と、お昼休憩に自販機の前で並ぶ由麻に会った時に言った。
「凄いね」
「今度、一緒に電車乗りましょう。名古屋あたりまで行くってのはどうです?」
「岡部くんがのsnsを見せてもらったけど、撮り方上手だよね」
「僕の、見てくれたんですね」

 由麻は京都に来ていた。岡部くんがどうして電車が好きなのか、どんな様子で写真を撮るのか、由麻自身も見てみたいと思った。snsに上げているなかで撮り方に興味があった。

#小説 #連載 #長編小説

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