『三都メリー物語』⑨
立春後の寒気で、寒があけてもまだ残る寒さのことを余寒(よかん)というらしい。
レイは、氷点下で白く凍った道路を仕事に向かう駅へと歩いていると、そのうち東の空から眩しい太陽の日が差し掛かってきた。レイは、自分の吐く息が一段と白くなるのがわかった。
入社してレイは、3年目からもうすぐ4年目に入る。そんなある日の午後の3時の休憩後に、レイのいる部所に上司の島田さんと共にフロアに入って来る女性がいた。ストレートのロングヘアーに白い肌、切れ長の目と整った綺麗な口が微笑んでいる。新入社員だろうか?だったら朝一にこちらにくるはずだ。こんな時間からフロアを案内なんて。男性社員たちがその女性に関心を寄せているようだ、仕事の手が止まっている。
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