首相は現実性のない中長期財政試算を鵜呑みにするな

岸田首相は財政健全化は重要であるとたびたび発言しているが、どうすれば健全化できるのか、具体的対策を示していない。そんな中で、1月14日に政府の経済財政諮問会議で内閣府が作成した「中長期の財政試算」が提示され、首相はそれをふまえて財政健全化の指標として2025年度のPB(primary balance, 実質財政収支)黒字化目標は維持すると発言した。

首相が根拠としたのは、この財政試算のなかでももっとも楽観的な前提にもとづく試算ケースであり、それは現実的な経済展望とはかけはなれている。首相のそうした発言は、政府の財政健全化目標が達成されるという誤った観念を国民に抱かせる意味で、健全でないし、さらに言えば無責任である。その内容をやや詳しく説明したい。

1. 内閣府「中長期財政試算」を発表
・これは首相のPB黒字化目標の根拠になるデータなので、以下、その意味を説明し、試算の前提と首相発言について意見を述べたい。
・1.14.政府は経済財政諮問会議で新たな中長期の財政試算を提示
・中長期財政試算は例年1月と7月に公表。今回は1月発表。

・2ケースの試算
           全要素生産性伸び率  名目GDP成長率  
 成長実現ケース     1.3%        3.0%    
 ベースラインケース   0.7%        1%台前半
   足元の動き     0.4%       1.6%(13〜19年度平均)

・岸田首相はこの試算結果をふまえて2025年度の黒字化目標を維持すると発言した。
・岸田首相は「成長実現ケース」の前提にもとづき「財政健全化(PB黒字化)目標年次は25年」と言明した。
・内閣府は「成長実現ケース」で税収増加と歳出改革継続を見込み、25年度黒字化は可能と説明している。

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