
改めて「仕事」について考える
ジムに行きたい。ただそれだけだ。家でチューブを引っ張ることに飽きてしまった。ダンベルを持ちたい、バーベルを持ちたい。
失礼致しました、取り乱してしまいました。
外出自粛が続く中、日頃受けていたサービスがどうゆう人によって支えられているかを改めて考えるきっかけになった。ということで、今回のテーマはこちら。
#どう守る私たちの仕事
緊急事態宣言が発令されて、営業停止を余儀なくされる企業・お店が多くある。そして、もちろん従事者も働くことができないので、休業を余儀なくされる。問題になってくるのは休業手当だ。
企業が経営難に陥っていることは百も承知だがそれ以上に労働者も生活の困窮に苦しんでいる。非正規雇用者はなおさらだ。
ということで、今回は非正規雇用者の労働をどう守っていくかについて考える。
結論から言うと、労働者・労働組合・企業それぞれが積極的に対策を考えていく必要がある。
労働者:労働組合などを利用して声をあげる
労働組合:情報発信の工夫
企業:労働者に対する意識改革
ありきたりなことだが、これを考えるに至った経緯を思うがままに書き連ねていくことにする。
休業手当が支払われていない?
5月12日、あるニュースが目に飛び込んできた。コナミスポーツが非正規雇用者に対して休業手当を支払っていなかったそうで。(結局、5月15日をもって休業手当を支払うことになった。)
コナミスポーツは従業員の約9割近くが非正規雇用者であると言われている。休業手当をもらえないことは収入源が断たれることに等しいため、大部分の従業員が生活に苦しむことを考えると、ただのニュースとは思えない。企業側の言い分としては「緊急事態宣言の要請による施設の使用停止だから休業手当の義務はない」とのこと。
従業員がTwitter等で休業手当の支払いを求めても企業は応じることはなかった。また、数名のインストラクターが「総合サポートユニオン」という労働組合に加盟し団体交渉を行おうとしたものの、「緊急事態宣言が解除もしくは緩和されてから日程を調整する」との回答で交渉すらままならなかった。
結局、総合サポートユニオンは本社前で抗議活動を行い、厚生労働省記者クラブにて記者会見を実施。コナミスポーツは3月以降の休業期間中の給料をを支払うことで承諾した。
フィットネスクラブ業界の実情
大多数のジムが、アルバイトをはじめとする多くの非正規雇用者で成り立っており、インストラクターの大半も非正規雇用者である。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、フィットネスクラブで働く従業員45,492人のうち、37,013人が非正規雇用者である。全体の約8割が非正規雇用者で構成されている。
また、同調査より2020年2月・3月それぞれの売上高合計は27,622(百万円)、18,855(百万円)となっており、大きく売上高が下がっていることがわかる。4月以降は緊急事態宣言により営業停止となった店舗が多いため、より売上高が下がると予想される。
また、営業停止に伴い、休会者や退会者も増加していることも一つの懸念点だ。
実際に大手フィットネスジムである「ゴールドジム」ですら経営破綻に追い込まれている。
大幅な売り上げ減収に伴い、ジム自体も経営維持に四苦八苦しており、非正規雇用者へ休業手当を支払うとなると経営難にさらに拍車をかけることになる。しかし、それは企業側の問題であって、国からの助成金が支給される現在、助成金の申請をせずに非正規雇用者への休業手当を支払わないことは大きな問題だ。
非正規雇用者の中には休業期間中有給休暇を使い切ってしまう人も存在し、病気になってしまった場合などに今後休みが取りにくくなってしまうと言うことが起こりえるため、今回を乗り越えれば大丈夫と言う問題ではなさそうだ。
労働者がすべきこと
至極当たり前のことだが何かしらアクションを起こすことが求められる。
非正規雇用者であるからと言っても労働者であるということにおいては正規雇用者と変わりない。企業からの補償を受ける権利があるし、労働組合に加盟することもできる。団体交渉を行えば、企業の行動を是正しやすくなる。
しかし、行動しなければ事態は何も変わらない。
例えば今回は総合サポートユニオンが記者会見を開き、世論の影響もあってコナミスポーツ側が手当支払いに応じたが、他にも休業手当が支払っていない企業は少なからず存在しているだろう。あくまでも企業側は手当を支払う法的な義務が存在しないため、労働者側もそのことを受け入れがちだ。しかし、労働者である以上、企業から休業手当をもらう権利があるということを自覚すべきだ。
労働組合がすべきこと
逆に労働組合は不当な待遇を受ける非正規雇用者にできるだけ認知されるような情報発信、労働者の受け入れ体制づくりが求められる。
いかなる労働者も気軽に相談できるよう、より幅広く効果的に宣伝していく必要がある。例えばテレビCMを増やしたり、ネット広告を利用したりと方法は様々である。またTwitterやYoutubeなどの広告媒体も豊富に存在しているため、いかに労働者の目に止まるかを考えなくてはならない。
現在、相談窓口には休業手当の支払い交渉のために非正規雇用者が殺到しているようだが、まだ相談すらできていない人や非正規雇用者が労働組合に加盟できることを知らない人も少なからずいるだろう。そのような人にも認知される、利用されるように存在感を示していくことべきだ。
国・企業に効果的に交渉するためには労働組合の存在がなくてはならない。
現在検討中の休業者給付金は、雇用調整助成金の申請をしていない「中小企業」の従業者が対象となっている。しかし、今回のように雇用調整助成金を申請していない大企業で働く従業員は対象となっていないため、この点に関しても労働組合を通して交渉の余地はあると考える。
企業がすべきこと
労働者あってこそ経営ができると再認識すべきである。そこに正規・非正規は関係ない。
確かに今回の例で言うと休業手当を払う”義務”はない。休業することでただでさえ売り上げが低下しているにもかかわらず、その上全ての休業者に手当を支払うことはさらに首をしめることになるだろう。
しかし、その負担を少しでも軽くするために雇用調整助成金などの制度がある。法的拘束力がないからといって助成金を利用しない、パート・アルバイトだからといって休業手当を支払わないことは大問題だ。
労働者を単なる労働力と思ってはいけない。
以上、労働者・労働組合・企業のそれぞれの立場から休業手当について考えてきた。労働者の生活・仕事を守るためにも休業手当はとても重要なファクターだと言えよう。
ということで、ジムの再開を祈りつつ、この記事を締めさせていただく。
休業手当が出ても、家でチューブと向き合う日々はしばらく続きそうだ。