幸福になる秘訣(宇野千代)

> 大正・昭和・平成にかけて活躍した作家の
> 宇野千代さん。
>
> 本日は1987年8月号の『致知』で語られた
> 「運」についての貴重なお話をご紹介します。
>
> ………………………………………………
>
> 「運は自分がこしらえるもの」
>
>      宇野千代(作家)
>
> ………………………………………………
>
> 失恋して泣いたこともありますね。
> 泣かなかったように書いたこともあるけど、
> それはうそ。
>
> ただ、私は一人きりで失恋しました。
> 失恋した時に、よく他人に
> 「あんな薄情な人ってあるでしょうか」
> と訴えて歩く人がいるけど、
> あの方法では失恋は退治できませんね。
>
> あの人は捨てられたんだなと笑われるのが、
> 関の山です。
>
> 私は自分一人で誰も見てないところで、
> 目も当てられないほど、わぁわぁ泣いてね。
> そうして一晩中、よじって泣いている間に
> 体の中にあったしこりみたいなものが発散して、
> ケロッと失恋の虫が落ちてしまうのよ。
> そうして、お化粧して一番いい着物を着て街へ出かけるの。
>
> あのね、失恋しやしないか、
> 失恋しやしないかと思っていると、
> 失恋するんです。
>
> だから、おもしろいですよ。
>
> 人生、いいように考えることが大事ですね。
> それがもうコツですね、人生の。
> 人生を渡るコツです。
>
> 私の弟が船乗りでしたが、
> 一回でも舵をとるのをあやまって
> 船を衝突させたことのある人には
> その船会社では二度と船の舵を
> とらせなかったそうです。
>
> また衝突しやしないか、しやしないかと思ってると、
> また衝突するんですって。
> これは、ほんとに真理ですね。
>  
> 運が悪いとこぼす人は、私、嫌いです。
> 自分が運をこしらえるんだものねぇ。
> 自分が悪いから運が悪いの。
>
> 前向きでいつも、自分は運がいい、
> 運がいいと思うんですよ。思うことですね。
>
> 結局、失恋も運が悪いのも自分がもと。
> どんなにね、人から見て運がわるそうだとしても、
> ああ、私は運がいいなあ、
> なんて運がいいんだろうと思っているとね、
> 運がよくなる。
>
> 私は六十歳のときにね、
> ニューヨークでものすごく感動したんです。
>
> ニューヨークの大通りを観光バスに乗って
> 見物していたら、わたしのすぐ近くに
> 腰を下ろしていた一人の若い女が
> きれいに化粧してね、
> 花飾りのいっぱいついた帽子をかぶって、
> 満面に笑みをたたえ、見るからに幸福でたまらないという
> 顔をしている。
>
> よく見ると、両手とも肩から
> すっぽり切り落とされたようになっているんです。
> それなのに嬉しそうな、世にも幸福そうな顔をして、
>
> 「私は両手とも肩からすっぽりと落ちています。
>  でも、こんなによいお天気で気持ちがよいのに、
>  両手がないくらいのことで、
>  この私が、幸福になってはいけない、
>  とでもいうことがあるでしょうか。
>  人間には誰にでも幸福になる権利が
>  あるんではないでしょうか」
>
> とでもいってるようにほほえんでいる。
> あれだと、思いましたね。
>
> 私は、このときの感動をいまも忘れないですね。
>
>

いいなと思ったら応援しよう!

はるお
Pokekara、BIGOにいます(^_^)/はるおの音楽お聴きください